審判の秘密
“近くて遠い”・・・審判と選手の微妙な関係
審判と選手の関係は、実際にはどうなのか?「よく試合が終わると審判も選手と一緒になって酒飲んでるんだろう、と疑っている人もいますけど、とんでもない。僕は17年間の審判生活で一度も経験がありません。一度シーズンオフ、ある選手とバッタリ酒場で顔を合わせたことがあるんですけど、その選手は僕の顔を見た途端に帰りましたよ。僕でもそうしますもん。一緒にいる場面をマスコミにでも見られたら、もう何言われるか分からないですからね。一度なんか、ある新聞に“三浦が江川に甘いのは、同じ横浜の緑区に住んでいて、しょっちゅう電話で連絡を取り合っているからだろう”なんて書かれたことがある。冗談じゃないですよ、僕は江川の家がどこにあるかすら知らなかったんですから。とりわけ僕の場合“江川の恋人”なんて言われたものですから、イタズラ電話とかが多かった。“家に火をつけるぞ”なんてしょっちゅう。“オマエの子供を殺してやる”なんてものまでありましたからね。もっとも僕には子供がいなかったので“どうぞ、どうぞ”って言ってやりましたけどね。
そういえば、広島球場でしたか。タクシーに乗せてもらえなかったこともあります。“オマエ、三浦じゃろ!?”と聞いてくるから“ええ、そうです”と答えると、“オマエは巨人びいきじゃから歩いて帰れ!”トラブルに巻き込まれたら嫌なので、本当に歩いて帰りましたけどね。それに、僕から言わせればマスコミも悪い。審判のファインプレーは全く記事にしないくせに、ちょっとミスらしきものがあると“あの1球で流れが変わった”なんて書くんですからね。カメラマンもそういう時に限って見事な“証拠写真”を撮ってくれる。もうこっちはたまらんですよ。だから、僕なんかよく思いましたよ。ミスした写真が載っている新聞があると“これ全部買ってやろうか”って。そりゃ、審判にだってミスはありますよ、神様じゃないんだから」