DHと代打〜最強の代打屋
最強の代打屋を作り上げた驚異的な「高井メモ」の存在
高井は16年の実働生活で27本の代打ホームランを放っている。14本で日本記録を更新し、19本で世界記録をも塗り替えた。その陰に「高井メモ」と呼ばれる克明な投手研究リポートがあったことを知る者は少ない。無理を言って、それを見せてもらった時、大げさでなく私は驚愕した。もし私がプロ野球のバッターであったなら、年棒の全てと引き換えにしてでも、それを買っていたことだろう。
その一部を公開しよう。78年の日本シリーズは阪急ブレーブスとヤクルト・スワローズの対決となった。上田利治監督がスワローズの大杉勝男のホームランをめぐって1時間19分にわたる抗議を行った。例の日本シリーズである。スワローズには安田猛という、そのシーズン15勝10敗4Sをあげたサウスポーがいた。彼のミラクル投法は、ブレーブスに大きな脅威をもたらすに違いないと思われていた。しかし、スコアラーが撮ったビデオテープを繰り返し見ることによって、高井は安田のクセを100%把握することに成功した。
「高井メモ」はこう記している。
<ストレート系・シュート含む>ワインドアップの時、頭上にあげたグラブが細くなり、先が立っている。このクセが出る時、球種はまっすぐ系統。
<カーブかホーク>逆に上にあげたグラブが丸くなり、グラブの小指が開く。この時は変化球。グラブの中で、ボールの縫い目を探し、カーブの握りをするものだから、自然と手の動きに従ってグラブも丸くなる・・・とこういう結果だ。
<セットポジションの時>おなかのあたりでグラブを静止する時、グラブの先が突っ立ているならストレート系。反対にグラブの先が下がり、グラブ全体が大きくなっているとカーブかフォーク。もっと簡単にいえば遅い球。
パ・リーグのピッチャーにいたっては、一軍に籍を置くほぼ全員が丸裸にされていた。二例、紹介しよう。まずは近鉄バファローズのアンダーハンド柳田豊。18年の実働生活で110勝140敗30Sの成績を残している。
<セットポジションの時、グラブから出た人指し指がグラブから降りてくるときに震えると真っ直ぐ。速いボールを投げてやろうとしっかりグラブの中のボールを握り締めるために指が震える。逆に指が動かんかったらカーブ>
続いてロッテオリオンズの村田兆治。150キロ前後の剛速球と地面に突き刺さるようなフォークボールを武器に、22年の実働生活で215勝177敗33Sを記録している。
<セットポジションに構えた時、右手が背中越しにはっきりと見える。ボールを持つ手首が半回転したらシュート系統。クソ掴みしとったらフォーク。だがそれが分かってもコイツのボールはなかなか打てん>