ストレート系パタンの考え方
☆
アイテム原型の二つの流れ
(前頁へ)
トルソー原型
は体型の
大きさとバランス
を表現する基本の原型です。 コスチュームの作成には更に
アイテム原型
と云う『中間的な原型』を作成して置き、それを媒介としてデザインを加え てパタンを作成する事は前述しました。これらの
アイテム原型
の差はT・P・Oに対応する素材とシルエットの相違で、 シルエットは緩みの入れ方によって相違が生じます。
この
アイテム原型
には大きく見ると二つの流れがあります。一つは
ストレート系
。二つは
プリンセス系
の二つがあります。どちらもトルソー原型に緩みを加えて体型から離れてシルエットを造るのですがストレート系は体型の ウエストのくびれを表わさない真っ直ぐなラインですが、プリンセス系は体型に密着して女性的なウエストのラインを表現するシルエットを造ります。
ストレート系
には
ドレス・ブラウス・ジャケット原型
と素材とTPOによって 違いがあり、更に
シャツ及びシフト原型
と云うアイテムもあります。
プリンセス系
には
ドレス・ブラウス・ジャケット原型
があり、 更に
パネルジャケット
云うアイテムがあります。
☆ ストレート系のアイテムは緩みの分量と入れ方に注意を払ってください。バストの緩みもですが、肩丈・カマ丈等の緩め方によって随分とニュアンスの違ったシルエットになります。 次表で見るようにドレス→ブラウス→シャツへと緩みの分量の変化は巾のみでなく、肩丈回りが変化してます。この緩みの数値は基準的なものですので後は随意に応用して下さい。
ドレス・シフト・ドレス
(ストレート)
(1)
ストレート・ドレス
ドレス(シフト)の緩みは全表のトルソー原型と同じで其の意味ではトルソー原型の延長のようなシルエットで、シフトは少しウエストがくびれています。いずれもストレート・ドレス の基本的なスタイルです。
後ろ身頃
トルソー原型をの輪郭線・基準線をコピーします。但しウエストのダーツ線は移しません。
E からドレス丈を取って L1 として右へ水平線を出します
(このケースでは背丈+スカート丈=98.5 cm としました。)
Wc 〜 G を結んで垂直線を下ろし、 L1からの水平線との交点を L2 とします。
E 〜 Gを結んで下に延長して後ろ中心線とし, L1からの水平線との交点を L3 とします。L2 〜 L3 は後ろ裾線の不足分になりますので後で追加します。
Sb 〜 Pbを結んで L1からの水平線との交点より 1 cm 外側に点をOb として Sb 〜 Ob を結んで脇線とします。
Ob から直角線を出して後ろ中心線との交点を L としてL 〜 Ob を後ろ裾線とします。
C から垂直線を下ろして裾線との交点を C2 とし、C1 〜 C 〜 C2を結んで「切り開き線」とします。
前身頃
後ろの G 〜 L1 と々寸法をGf から下にとり L4 として左側に水平線を出します。
脇の Sf 〜 Pf を結んで下に延長し、L4 からの水平線との交点より 1.5 cm 外側の点をQf として脇のSf 〜 Qf を結んで脇線とします。
後ろの L3 〜 L と々寸法を L4 から下にとり Lf とします。H2 〜 Lf は前中心線となります。
Lf 〜 Qf を結んで前の裾線とします。Lf から Bp の直下までは水平でQf とは繋がりの良い湾曲線で結びます。
袖ぐりの Ae から水平線を出して重心線との交点を aE とし、aE から垂直線を下ろして裾線との交点を A として aE 〜 A は切り開き線とします。
完成
後ろの C1 〜 C 〜 C2 をC1 を基点に脇側に回転させ、C2 からL2-L3+2.5 cm のフレアーを入れます。裾線を滑らかに繋ぎます。
Ae を基点にAe 〜 aE 〜 A を脇側に回転させ、A から 2.5 cm のフレアーを入れます。裾線を滑らかに繋ぎます。
地ノ目線は魔絵中心線・後ろはE 〜 L に通します。重心線・背巾線に入れるフレアーは体型の前後の角に出て体型を立体的に感じさせます。分量は任意に加減してください。
☆ 後ろ中心線の縫い目がない場合
後ろ中心に縫い目がない裁断では E 〜 L を会わせて左右のパタンを反転させます。
このカットは奇異に感じられる向きも多いと思いますが、此れで後ろのシルエットは綺麗の落ちます。
理由は『紙張りの分析』の項で説明しましたように体型表面の展開を するとバスト線に対して背巾線の直下のヒップ線は約 2 cm 開いています。その分を後ろ中心線を『捻って』閉じて体型の曲面に合わせる操作を此処で行ったのです。
よく出るし質問ですが「何故脇側を捻り、寄せてはいけないのか?」と云う疑問がでます。
背面の地ノ目線は肩甲骨のポイントで垂直に落ちる性質を持ちます。若し脇側で 捻って合わせますと地ノ目線の向きは後ろ中心の方向へ偏り、かえって後ろ中心が飛び出るようになり、それを脇側へ引き上げる結果になり、『ツレじわ』が出てしまいます。
それを避ける為に後ろ中心側を脇側方向へ『捻る』のです。下図を見ると L 〜 E を軸にパタンを反転させると後ろ中心を境にバスト線は左右に少し下がって見えるのですが バスト線と後ろ中心線を直角・・と思うのは従来のパタンの書き方による錯覚です。試しに双方をトワールに組んでダミーに着せてみるとよく判ります。
なおこの項の詳しい解析は
「パタンメーキングの基礎」
小野喜代司著
「婦人既製服パタンの理論と操作」
文化出版局版
(43P)を参照下さい。
シフト・ドレス
シフトドレスはストレート・ドレスのウエストを少し絞ってなだらかな曲線を加えたパタンで、素材によっては一段とドレッシィになります。パタンはストレートに僅かな変更を加えた ものです。
後ろ身頃
トルソー原型の輪郭を、ウエスト・ダーツを省略してコピーします。
E からドレス丈を取って L1 とし、右へ水平線を出します。
このケースでは背丈+スカート丈= 98.5 cm とします。
後ろ中心線 Wc 〜 G を延長してL1 からの水平線との交点を L とし、E 〜 Wc 〜 L を後ろ中心線とします。
脇線とヒップラインの交点 Pb から垂直線を出し、L1 からの水平線との交点より 2 cm 外側の点を Qb とし、 Pb 〜 Qb を結んで脇線とします。
背巾線の C からの水平線と袖ぐりとの交点 C1 をマークし、 C から垂直線を下ろし、裾線との交点を C2 として、C1 〜 C 〜 C2 にフレアーを入れます。
C1 を基点にして C2 を脇側に振り、トルソ原型のヒップ線での重なり分をヒップ線で同量になるように開きます。
前身頃
前中心線 H2 〜 Gf を延長して後ろの GL 〜 L1 と同寸法をとり、Lf とし、左へ水平線をだします。
脇線とヒップ線の交点 Pf より垂直線を下ろして Lf からの水平線との交点を求め、それより 3 cm 脇側の点を Qf として Pf 〜 Qf を結びます。
ウエスト・ダーツの配分
ウエスト・ダーツの配分は体型の重心線の前と後ろのウエストの計測値にゆるみの分量を加え、余剰部分をダーツに組み入れます。
この 方法ですと体型の前後のウエストの「しぼり」をコントロール出来るのでシルエットを好みによって調整できます。
前身の重心線の Wg から前ウエスト+ゆるみ= Wg 〜 tv ( 14.5 + 0 = 14.5 cm) を取ると tv 〜 Wf は前のダーツ分量です。これを 1/2 強と1/2弱に分けて配分します。
後ろ身頃では脇線の外側にある Wg のポイントより後ろに向けて後ろウエスト+ゆるみ= Wg + th (17.5 + 3.5 = 21.0 cm)を取ると th 〜 Wc は後ろのダーツ分量で す。これを 1/2 強と1/2弱に分けて配分します。
前身の重心線とヒップ線との交点 Gg から前ヒップ+ゆるみ=Gg 〜 gv (17.0 + 1.0 = 18.0 cm)を取ります。このケースでは gv 〜 Gf は殆ど重なり、差が少ないので ゆるみとします。
後ろ身では脇線の外側の重心線の位置 Wg から後ろヒップ+ゆるみ=Gg 〜 gh (28.0 + 2.0 = 30.0 cm)を取ります。このケースでは gh = G は殆ど重なり、 差が少ないのでゆるみとします。
若し gh が G より外に飛び出すようなら臀部の分量が足りないのでダーツを交差させて分量を増す必要があります。
完成
後ろ肩ダーツの頂点 M は 0/7 〜 1.0 cm 脇側へ移動し、ダーツ線を結び直します。
後rダーツはウエスト線より 0.7 〜 1.0 cm 下にとります。1/2 弱は M の直下の m 点の左右に、1/2 強は m と背巾線の中央より脇側にとります。ウエスト・ダーツの 止まりは肩甲骨・臀部・腰骨の膨らみに合わせます。
前肩ダーツは前肩線の中央に移し、Bp と結び直します。
,br>
前ウエストダーツは 1/2 強を Bp のM の直下の v 点の左右に、1/2 強は v と重心線の中央より左右にとります。ウエスト・ダーツの 止まりは乳房・腹部・腰骨の膨らみに合わせます。(図の点線のような流れに沿って)
,br>
地ノ目線は後ろ中心線、前中心線に通します。
左にトルソ原型とシフト原型の「ゆるみ量の差」を一覧にしました。ゆるみを少なく設定すればダーツ量は増加し、ウエストは より強く絞られ、多くすれば反対にゆったりとしたシルエットになります。
シフト・ドレスはウエストとヒップの緩み分量と前後への入れ方によって『表情』が変わります。 例示したのは標準的な数値と配分ですので、夫々が工夫して下さい。
Ladie's Patan Cutting のホームページ
(ホームへ)
(次へ)
(ページTopへ)