ご感想・ご意見
この裁断法(バランス・カッテイング)のご感想は如何でしたか?
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疑問、質問については出来るだけお答えします。またご研究の結果があれば教えて頂ければ幸いです。一緒に勉強を進める事が できます。
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cuttingの未来 〜 このホームページの役割と読者へのお願い
書き終えて
高齢になって始めたPCでホームページを、しかも永年に亘って生業(なりわい)として来たバランス裁断のテーマを掲載できるとは想像でき ませんでした。ご縁あって同じお仕事の方々が読んでくださり、日本の洋裁知識に不満をお持ちの方のお役に立てれば、これに越した喜びはありません。
それにしても 長期間にわたって『タグ』と取り組み、楽しませて貰いました。まだ未完の部分が相当あり、しかも自分の意見がその先にあるのでまだまだ楽しみは続きます。一応の完成 を見たのでUPしました。march/2005
日本の洋裁で一番不足している部分は
『立体の教育』
ではないか?と思います。私が立体裁断に触れたのは1060年代中頃、ニューヨークのパーソン大学の大野 順之助先生が東京の婦人服組合の招聘で初めて立体裁断を紹介された時のことでした。
その繊細な造形感覚に圧倒されるような感慨を覚えました。 折から高度成長の経済の波と共に日本の既製服業界の技術は長足の進歩を遂げました。
立体裁断は今までにない
『生地の地ノ目による立体的な造形』
としての シルエット作成の方法を日本の洋裁界に齎したと云えるでしょう。
しかしそれは今迄の日本の教育とは全然結びつかず、大きな溝がありました。立体裁断の限界は 『ダミー』に依拠せざるを得ない点と他は平面的な操作は個人的な感覚・経験に頼らざるを得ない、と云う2点にあります。 社会的な産業としてのサイズ展開やパタンの変更等には関係なく「造形」にのみ集約された
『個人の技能的な技術』
です。
ラテン系の国とサクソン系の国との洋服の差
この様な疑問を持ってヨーロッパに参りましたのは42歳の時でした。その際に感じた事を、あくまで個人的な印象ですが、述べて見たいと思います。
一つはラテン系の国と サクソン系の国とでは洋服の捉え方が違うと云う点です。ラテン系のフランス・イタリヤでは造形は個人的な技能が中心で洋服は『優美な』感じなのにイギリス・ドイツでは どちらかと云えば『硬い美しさ』と云うような印象を受けました。これは『ダミー』の制作でも同様でフランスの工房では自由にデフォルメされたダミーが多いのに比べてイギリスの 工房では平均的な体型の年齢別・体型別のダミーを揃える事に焦点があるように感じました。洋裁教育でもイタリヤの学校では『奇術的なパタン展開』を紹介し、原型等は立体で作成 されたモノをその儘使います。対してドイツのミュウラー学校では体型に紙を張り、展開して立体の性質を研究して原型を作成する。・・と云う次第です。
日本の洋裁技術に不足しているものは?
このように文化の違いは衣服文化・教育にもこの様に現れるのですが、わが国ではどうでしょうか?平面の裁断はイギリス とは変わりませんが平面のパタンと立体の感覚との繋がりを教育すると云う思想は欠落してるのではないか?と思います。例えば平面パタンと立体との関連からデザイン を展開する、または多数の体型の捉え方も身長・バスト及び他の部位寸法の統計をとって平面的な分類はおこなうが体型自体の成長変化・経年変化と云う捉え方は しない、等々いずれも立体としての捉え方・・と云う発想にかけているように思えます。
ですから最大の欠落は
『立体を平面のパタンで表現する場合の論理的思考』
であると考えました。
その様な理由からミュウラー学校の教え方に魅せられて勉強を始めました。人体美学の分野から「重心線」の発想を学び、結びつける事に により、バランスによる裁断方法に辿りついたのです。過去十余年あまりに亘って「セミナー」なぞでこの発想を伝えて来ましたが此れにも難点はあるようです。
バランス裁断法の難点と今後の課題
それは計測は兎に角として「紙張り〜展開」なぞの 手法は一部の研究者を除いては煩雑で一般的でない点、計測も多くの体型計測からの統計的な結論を得るのは一般的な学習法としては負担が多すぎる点、計測からのバランス比率の推論と計算式の 算出は一般的には煩雑であろうと云う点、なぞです。いかに論理的には正しくとも使い難い方法は一般的とは云えません。
従って今後の課題はこのバランスの組み合わせの発想を出発点にしてもっと簡便な計算式とl原型記述法を考える事と立体を平面上に描く感覚的な勉強法を考案する ことが必要でしょう。洋裁の技術は誰でも使い易い一般的な技術であることも大切なことです。更に次の世代では『IT』の技術への接近が大切な課題となるでしょう。その 様な願いをこれからの若い世代の方々が発展させてくださる事を期待してホームページを書きました。お読みくださいまして厚くお礼を申し上げます。
(註) 立体裁断はダミー(人台)の上にトワル(木綿生地)を当てて直接パタンの形を裁ち出してゆく裁断法で欧州では一般的な技能です。
『IT』技術の未来について
昨今の『IT』技術の進歩は目覚しく、多くの企業で企画・生産現場に採用されているようです。私自身は実際の業務では経験がないので具体的な感想は申せません がパタン作業では出来上がったデザイン・パタンの生産過程への投入以後は生産パタン作成・型入れ・縫製仕様書の作成・工場への情報伝達・では威力を表わすのは 確実です。しかしパタンの創造的な作成過程ではその操作機能のソフト開発は今一つで、人間の手と目による作業の方が実際的な様です。そして当分はソフトの 開発はコストの関係から期待できそうにはありません。従ってこの段階では●ダミーによる造形・パタン作成・●人力による変更・修正との併用が主体になるように思われます。
従って造形段階では「ダミーの体型可変式のもの」が開発されるともっと造形が容易くなるでしょう。それに「平面パタンの3次元的な変更の理論」がもっと一般的な技術と して開発されれば・・と思います。現在では3次元設計のソフトでは東レイのコンポがあり、私も今一つ勉強をして見たいと考えて居ります。読者からこの点についての何ら かの示唆があればうれしく思います。
どうも精読を戴き有り難うございました。
Ladie's Patan Cutting のホームページ
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