私は若い頃,夜学の洋裁学校でパタンを学びましたが製図法に漠然と疑問を感じてました。
何故 ○○ cm のダーツを取るのか?と云う論理的
な説明はなく、「やり方と順序」を習うだけでした。
これは1920年代に始まった洋裁教育が主として欧州の家庭洋裁の手法に範を取ったからと思われます。また当時は『仮縫い』つきの個別生産であったので、それ程厳密なパタンは要求されなかったのもあるでしょう。
戦後、日本の衣服生産は増大し、レデイメードが主流になりました。然しパタン技術は旧来のままで,それを援用して生産されていました。60年代になって「立体裁断」を学び、日本の製品のレベルは飛躍的に向上しました。トワルでのシルエットの造形に
終始する「立体裁断」は視覚的な手法で繊細な造形を作り上げる優れた方法です。.だが一方、サイズや体型差への説明はなく、平面上の操作は経験による
他はなく、やはり万全ではありません。「ダミーの造形」と社会的な製品とを結ぶ論理は欠落してます。
その頃、欧州滞在中に出会ったのが
「ミュウラーの裁断法」でした。
それは体型に紙を張り、平面に展開することから始まる論理的な方法で、それに魅せられ勉強しました。その考え方を基礎にしたバランス裁断がこの
ホームページの基礎になりました。
この方法にも問題はあります。立体の曲面を平面化する論理から出発するので理屈っぽく、取り付きにくい、のが難点です。それに製品が多少制服的な「硬い」
感じがしてヨーロッパ的な香りは出にくい
と思います。しかし体型のバランスとパタンの関係が理解できる学習法としては他に例がなく、体型のバランスとパタンの仕組みを理解する事によって
「パタンの扱い」は非常に
容易くなり、造形やサイズのグレーデイング(パタンの拡大・縮小)、・修正等の技術を要求される変化の多い業務にも役立ちます。
衣服の作製の根源は「感覚」ですし、時代の変化により社会のニーズも変わり、技術も進歩します。おそらく次の時代は『IT』による変容を経験するようになるでしょう。
ですからどれが良い、悪いではなく、色々な方法を通じて学び、夫々の立場で「技術」をより充実させて戴きたいと思います。
なお学校等で教育に『バランス裁断』を使われるケースがありましたらご連絡下さい。便宜を計れると存じます。
なお詳細に興味をお持ちでしたら
「パタンメーキングの基礎」小野喜代司著
「婦人既製服パタンの理論と操作」文化出版局版
を参照下さい。
質疑、疑問をお寄せ下されば出来る限りお答えしたく存じます。一般的な事項については整理して掲載します。
なお、未稿の部分に付きましてはご要望に応じて出来る限り追加・更新して参りたいと存じます。
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