グレーデイング（１）

体型の変遷の予備知識

誕生から成人までの体型の変化は？

☆　3頭身から7頭身へ〜その変遷
赤ちゃん〜幼児〜子供〜少女・少年期〜思春期〜成人期〜熟年期〜高齢期・・と人体は加齢により経年変化を経て参りま すが体型はどの様の変わって行くのでしょうか?

このホームページでは成人女性のパタンをテーマとしてますが大雑把に体型の変遷を見ますと次表のような変化が見られます。


• 成長期により、また個人差により一概には云えませんが平均して16歳ごろの成熟期までは年間に身長 5.0 cm 大きくなるのにバストは 2.0 cm の割合で成長します。



• しかし次第に個人的な偏差が出て思春期〜成人期には色々な体型バランスになります。
  日本の業界では
  Y型（身長の高い割りにバスとは小さいタイプ）
  A型（平均的な身長・バストのタイプ）
  プチ型（身長も低くバストも小さいタイプ）
  B型（バストの割りにウエストの大きいタイプ）
  が入られるようになり、JIS　では次の様なサイズ表を発表してます。



• このように色々のタイプの体型や同じタイプでも身長やバストのサイズの違いがあります。これは遺伝の要素や生活環境の差なぞの結果で生じるものでしょう。



• グレーデイングはこのような色々の体型やサイズによって作成された原型やデザイン・パタンを他のサイズや体型のバランスに変更する操作テクニックです。




グレーデイングはパタンのバランスを変更する操作

• 例として（A)9号のパタンを（11号）に拡大するケースを見ると身長は 1.2 cm × 2 = 2.4 cm 拡大し、バストは 3.0 cm × 2 = 6.0 cm 拡大します。逆に（A)9号の パタンを（５号）に縮小するケースでは身長は = 2.4 cm 縮小し、バストは = 6.0 cm 縮小します。この拡大・縮小の差を『ピッチ巾』と云います。



• 更にバストの 6.0 cm の拡大は前巾や後ろ巾では均等に拡大するのではなく、前巾の方が後ろ巾より比率が大きくなり、また前丈は後ろ丈より比率が大きくなります。 それはバストが張り出す分量が加わり、横方向に増加すると共に縦方向にも寸法が増加するからです。これの詳細は『計測と分析』の項をご覧ください。



• ですから体型の各部位の変動する分量を予め計算して「ピッチの一覧表」を作成し、それに従ってパタンの拡大、縮小の操作をします。この各部位の変動巾を一覧にした表を『ピッチ表』といます。



• ピッチ表には身長とバストが比例して変化する『比例式』と身長は変化せず、バストのみ変化する『固定式』とがあります。一般的には僅かでも身長も変化する『比例式』が用いられるようです。




ピッチの計算と表の作成 〜身長＝T,バスト＝Bと略称

☆　ピッチの計算には二つの方法があります。
（A)サイズの最小・最大のバランスを計算してその差を各サイズに配分する方法
（B)ピッチの計算式を予め算出して各 サイズの差を代入してピッチを直接計算する方法
• （A）の例バスト 82 cm 〜 100 cm[バスト差 = 18.0 cm] の場合( 3.0 cm× 6 ピッチ)
  前巾= 82 cm × 2/10 = 16.4 cm.
  前巾=100 cm × 2/10 + (100 - 80 ) × 1/20 = 21.0 cm
  ピッチ差 = 4.6 cm ですから　バスト 3.0 cm のピッチは 4.6 cm× 1/6 = 0.76 cm
  
  後ろ巾 = 82 cm × 2/10 - 1.0 = 15.4 cm.
  後ろ巾=100 cm × 2/10 - 1.0 - (100 - 80 ) × 1/20 = 18.0 cm
  ピッチ差 = 2.6 cm ですから　バスト 3.0 cm のピッチは 2.6 cm × 1/6 = 0.43 cm
  ※前後巾のピッチを調整して前巾のピッチ = 0.8 mm 後ろ巾のピッチ = 0.4 mm とします。



• （B)の例
  前巾差 = バスト差 × 2/10 + バスト差 × 1/20 に代入すると、
  18.0 cm × 2/10 + 18.0 cm × 1/20 = 4.5 cm
  ピッチ差 = 4.5 cm ですか ら　バスト 3.0 cm のピッチは 4.5 cm × 1/6 = 0.75 cm
  
  後ろ巾差 = バスト差 × 2/10 ー バスト差 × 1/20 に代入すると、
  18.0 cm × 2/10 ー 18.0 cm × 1/20 = 2.7 cm
  ピッチ差 = 2.7 cm ですか ら　バスト 3.0 cm のピッチは 2.7 cm × 1/6 = 0.45 cm
  ※前後巾のピッチを調整して前巾のピッチ = 0.8 mm 後ろ巾のピッチ = 0.4 mm とします。


☆　ピッチの計算のポイントバスト 80 cm 〜 100 cm のゾーンでは
�@　バストが拡大すると前丈と後ろ丈の増加比率が変化する。
後ろ丈の差 = T × 1/4 : 前丈の差 = T × 1/4 + ( 100 ー 80 ) × 1/10
�A　バストが拡大すると前巾：後ろ巾の増加比率が変化する。
前巾の差 = B × 2/10 ・・・B × 2/10 + ( 100 - 80 ) × 1/20
後ろ巾の差 = B × 2/10 - 1.0 ・・・B × 2/10 - 1.0 cm - ( 100 - 80 ) × 1/20
�B　T × 1/20 + B × 1/10 は｛A 基準｝と称して肩回りの部位の変化の基準になる。
対象になる部位・・カマ丈・後ろ肩丈・前肩丈・後ろ肩巾・前肩巾
�C　T　に比例する部位・・背丈・ヒップ丈
�D　B に比例する部位・・後ろ首巾・前首巾・乳頭間隔・前首丈

この様に整理すると体型の変化の複雑なポイントはバストの発達がバスト周囲と前後の丈に要因があることが解かります。 それで簡単にピッチ計算をするには（B)の個別の差の計算式に拡大差を代入してピッチを算出するのに慣れると便利でしょう。

☆　個別ピッチの計算式の一覧
●　後ろ丈差　＝　身長差 × 1/4 ・・・　背丈差（T差 × 1/4 ）・ヒップ丈差（T差 × 1/8 ）・後ろ首丈差は 2.0 cm に固定の為変化せず。
●　前丈差　　＝　後ろ丈差 + バスト差 × 1/10　・・・前首丈差 = バスト差 × 1/20, 前身丈差 = 前丈差 ー 前首丈差
●　カマ丈差　＝　身長差 × 1/20 + バスト差 × 1/10 （A基準）・・・後ろ肩丈差 = A基準、前肩丈差 = A基準、
●　後ろ巾差　＝　バスト差 × 2/10 ー バスト差 × 1/20,
　前巾差　＝　バスト差 × 2/10 + バスト差 × 1/20,
　カマ巾差 = バスト差 × 1/10,
●　後ろ首巾差　＝　バスと差 × 1/20, 前首巾差 = バスト差 × 1/20 × 7/10,乳頭間隔 =　バスト差 × 1/10,
●　後ろ肩巾差　＝　A基準= 身長差 × 1/20 + バスト差 × 1/10, 前肩巾差 = A基準 - 3/100 ＜省略可＞


ピッチの完成

• 下の表は（A体型）7号〜15号のピッチ表の例です。9号のパタンを１１号に拡大するには1 ピッチ、15号には3ピッチの拡大と云う操作を行います。




☆　付記 80 cm 以下・100 cm 以上のピッチの計算のポイント
◎　バスト 60 〜 80 cm では
前巾の差＝　B × 2/10 - 0.5 cm ・・・B × 2/10 - 0.5 cm + (B - 60) × 1/40,
後ろ巾の差＝　B × 2/10 - 0.5 cm ・・・ B × 2/10 - 0.5 cm - (B - 60) × 1/40,
カマ巾の差＝B × 2/10 + 1.0 cm.

◎　バスト 100 〜 120 cm では
前巾の計算式＝100 × 2/10 + 1.0 cm + ( B - 100 ) × 3/10
後ろ巾の計算式＝100 × 2/10 - 2.0 cm + ( B - 100 ) × 1/10
カマ巾の計算式＝100 × 2/10 + 1.0 cm + ( B - 100 ) × 1/10

※　バスト 80 〜 100 の前巾：後ろ巾の相対的な拡大比率は 2:1, 100 〜 120 では 3:1 となり、前巾の比率が高くなります。
※　バスト 80 cm 100 cm をまたがるピッチ表は別に作成して連続させるようにします。なお 0.0以下の数値は計算上出てくるもので実際的ではありませんから全体の 数値の分布バランスから適宜に丸めて用います。また多少のサイズが境界を越えるのはその儘継続して計算しても差し支えありません。


• 以上のようなポイントに留意されて『グレーデイングの操作』をご覧下さい。
  
  なお『サイズ表・ピッチ表』の詳細につきましては
  「パタンメーキングの基礎」小野喜代司著
  「婦人既製服パタンの理論と操作」文化出版局版
  を参照下さい。