袖の原型(3)
シャツ袖、& 袖山の調整法
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このタイプも袖は(1〜2)の袖と異なり、スポーツ・タイプの袖です。2000年代に入って従来の流れは変わってスポーツ・ライクな 衣料が消費の大きな流れになり、パーカー、フリーズ等一般的になると共に,このタイプの袖は重要な位置を占めるようになりました。もっと研究されてよい分野でしょう。
シャツの袖の性質
このタイプの袖は@ 身頃の『ゆるみ』が非常に大きく、A袖ぐりも大きくカマ丈も深く、B袖ぐり線は湾曲が少なく、C従って袖巾は 広く、D袖山は非常に低い、と云う点で他のアイテムにはない袖のスタイルです。製図法は袖ぐり線をつかいますが方法は異なります。
この例ではシャツ原型の袖ぐり線を使います。
☆ 身頃と袖の寸法
身頃の寸法
後ろ肩丈 = 21.6 cm,
前肩丈 = 21.1 cm
カマ巾 = 13.0 cm
前袖ぐり寸法 = 24.5 cm
後ろ袖ぐり寸法 = 24.8 cm
袖の寸法
袖丈 = 54.0 cm,
袖巾 = 46.5 cm
肘線巾 = なし
袖口巾 = 23.0 cm
イセ分量 = なし
肩パット = なし
シャツの袖の製図
☆ 前袖の製図
前身頃の袖ぐりを横向きに袖ぐりを下にして写します。肩点 Ab は K 点となります。
K から半径=袖山の高さ・・の円弧を振ります。
袖山の高さ = (後ろ肩丈+前肩丈)× 1/6 = 7.1 cm
Ae から身頃の aE 〜 Bg (Bp線からのAe の高さ)をコンパスに取り、円弧を振ります。
Ae の高さ =カマ巾× 1/4 = 3.3 cm
二つの円弧に共通の接線を引き、直角に K より垂直線を引き、更に延長して袖丈を L を取ります。
K 点から斜めに接線上に、「前袖ぐり寸法 - 0.3 cm 」をとってS1 とし、K 〜 S1 を結んで前袖山線のガイド・ラインとします。
K 〜 S1 = 前袖ぐり寸法 - 0.3 cm = 24.2 cm
L から右へ直角線を出し、1.0 cm 右を L1 とし、k 〜 L1 を結んで振りの基準線とします。この線と先ほどの接線との交点を G とします。L 〜 L1 はシャツ袖の振り分です。
S1 〜 n1 を結び、1.0 cm 延長して n2 とし、S1 〜 n2 を曲線で結びます。S1 〜 n2 は前袖下線です。
L1 から基準線上に肘線の高さ( L1 〜 E) をとります。
肘線の高さのバランス = 身長×1/7 = 158 cm × 1/7
n2 から上に肘線の高さ - カフス巾をとって E1 とマークして合い印とします。
☆ 後ろ袖の製図
後ろ身頃の袖ぐりを横向きに袖ぐりを下にして写します。肩点 Ab は K1 点となります。
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K1 から半径=袖山の高さ・・の円弧を振ります。
袖山の高さ = 前袖と同じ
C1 から身頃の Bw 〜 C (Bp線からの C1 の高さ)をコンパスに取り、円弧を振ります。
C1 の高さ = 後ろ肩丈 × 1/4 = 5.4 cm
二つの円弧に共通の接線を引き、直角に K1 より垂直線を引き、更に延長して袖丈を L2 を取ります。接線と垂直線との交点を G1 とします。
K1 点から斜めに接線上に、「後ろ袖ぐり寸法 - 0.3 cm 」をとってS2 とし、K1 〜 S2 を結んで前袖山線のガイド・ラインとします。
K1 〜 S2 = 後ろ袖ぐり寸法 - 0.3 cm = 24.5 cm
K 点から斜めに接線上に、「前袖ぐり寸法 - 0.3 cm 」をとってS1 とし、K 〜 S1 を結んで前袖山線のガイド・ラインとします。
K 〜 S1 = 前袖ぐり寸法 - 0.3 cm = 24.2 cm
L2 から直角線上にカフス巾 ( L2 〜 n3 )をとり、n3 から右へ直角線を出して後ろ袖口巾をとります。
後ろ袖口巾 = (袖口巾+タック分)× 1/2 +1.0 cm = 15.0 cm
S2 〜 n4 を結び、1.0 cm 延長して n5 としてn3 〜 N5 を曲線で結びます。S2 〜 n5 は後ろ袖下線です。
n5 から後ろ袖下線上に(肘線の高さ - カフス巾)をとり、合い印 E2 とします。
☆ 袖山線の記入
新しく垂直線と水平線を交差ささせて引き、前袖の K 〜 L を垂直線に、G 〜 S1 を水平線に合わせて置きます。K 〜 n は前方向に傾斜します。
後ろ袖の K1 〜 n3 を前袖の K 〜 n に合わせます。G1 〜 S2 は後ろ下がりに傾斜します。地ノ目線はK 〜 n に通します。
K 〜 S1 (前袖山のガイド線)を3等分し、袖山点から 1/3 の位置で 1.0 cm, 2/3 の位置で 0.5 cm 各々山側にガイド点を設け、これらを目安にK 〜 S1 を曲線 で結び、前袖山線とします。
身頃の Ae 〜 Sf と同寸法を S1 からとり、袖山の Ae 点とします。
K1 〜 S2 (後ろ袖山のガイド線)を4等分し、袖山点から 1/4 の位置で 1.0 cm, 2/4 の位置で 0.5 cm 3/4 の位置で 0.8 cm各々山側にガイド点を設け、これらを目安にK 〜 S1 を曲線 で結び、後ろ袖山線とします。
身頃の C1 〜 Sb と同寸法を S2 からとり、袖山の C1 点とします。
袖口の n5 〜 n(n3) を2等分してその後ろ側に短冊巾をとります。短冊巾の位置を基準にしてタックの位置を決めます。
実際にパタンの作成をすると『もう少し袖の前側にゆとりを入れたい』または『身頃のカマ底線を下げたい』と云うような場合が生じます。 その様な場合にどのように対応したらよいか?について二つの説明をします。ドレスからコートまで応用出来ますので覚えておくと有効だと思われます。
袖山との調整(1)・・袖山の前側の巾と後ろ側の巾の調整
☆ 袖山前側と共に袖巾も広げる場合
円の図のようにAe 点を重心線の外側に 0.5 cm 出して設定し、K1 〜 aE を結ぶと前側の丸みが少し増加して袖前側のゆとりが増えます。
そして袖筒上部を反転させると右図のように肘線から Ae の線が右に倒れ、袖巾も僅かに広がります。
袖下のS 点も右に滑り、S 〜 e は右に倒れた状態です。
後ろ袖を反転させると S が右に移った分だけ後ろの袖巾も広がります。
☆ 袖山前側は拡げても袖巾は広げたくない場合
円の図のようにAe 点を重心線の外側に 1.0 cm 出して設定しますが同時に袖ぐり線を逆に 1.0 cm 内側に引っ込めて設定します。前側の丸みは少し増加しますが 袖巾には影響しません。
その上で袖筒上部を反転させると右図のように Ae 点は右側に少し出て丸みは増えますが、袖巾は元のままです。
実務的にはAの方法が一般的に用いられるようです。
いずれにしても袖山の仕上げには袖ぐりと袖山の C1 〜 K, Ae 〜 K を計測して具体的に X xm のいせ込み分量になるか?を確認するようにします。
袖山との調整(2)・・身頃のカマ底線の下がりと袖山の調整
製図の途中で袖ぐりのカマ丈を下げ、袖巾を広げたい要望がある際の方法を示します。
☆ 袖繰り線を下げる方法
後ろ身頃の Sb の下に下げたい寸法をとって(イ)水平線を引きます。
C1 〜 Th を結んでガイド線とし、直角定規を当てて滑らし、ガイド線に直角に Sb までの長さ(ハ)を計測します。
次に定規を下方に滑らせてガイド線に直角に (ハ)と同寸法の位置を水平線上に求めて(ニ)新Sb とします。
C1 から新Sb へ新しく袖山線を書き入れます。また新Sb から脇線と平行に新しく脇線を記入します。
前身頃でも同様に後ろ身頃と同寸法の距離に水平線を引き、
Ae 〜 Tf を結んでガイド線とし、直角定規を当てて滑らし、ガイド線に直角に Sf までの長さ(ハ)を計測します。
次に定規を下方に滑らせてガイド線に直角に (ハ)と同寸法の位置を水平線上に求めて(ニ)新Sf とします。
Ae から新Sf へ新しく袖山線を書き入れます。また新Sf から脇線と平行に新しく脇線を記入します。
☆ 袖山線の変更の方法
袖山の後ろ側の S2 から身頃で下げた寸法の 1/2 を袖下線の下方にとり、短い直角線を出します。
後ろ身頃・袖ぐり線の C1〜 新S2 の長さを計測し、袖山の C1 から湾曲を付けてS2 の下のガイド直角線上にとり、袖の新 S2 とし、肘線にかけて新しく袖下線を記入します。
前側でも同様に S1 から身頃で下げた寸法の 1/2 を袖下線の下方にとり、短い直角線を出します。
前身頃・袖ぐり線の Ae〜 新Sf の長さを計測し、袖山の Ae から湾曲を付けてS1 の下のガイド直角線上にとり、袖の新 S1 とし、肘線にかけて新しく袖下線を記入します。
Ladie's Patan Cutting のホームページ
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