第10回

日本の企業力の幻想

日本の経済力は確かに凄いと感じますよね。GDPで捉えたら、米国に次ぐ世界第二位です。今までのところ……米国の有名な研究所では、間もなく、中国が第二位になると予想しています。本当に間もなく、多分、来年までにはでしょう。

勿論、GDPが高くても、国民一人当たりの可処分所得と購買力が高くなければ、富の偏りが酷すぎるということになるのでしょうね。分析は、総額を単に頭数で割って一人当たりを算出するわけでもないでしょう。それだったら、意味のないことですから…

時価総額10兆円を超える企業

ところで、フィナンシャル・タイムズ誌発表の2008年末時点時価総額が1000億ドル(約10兆円)を超える企業を見ますと、旧ビッグスリーの破綻で米国も大変だなあ、などと同情するのは、GMやクライスラーの労働者達に対するものだけにした方が良さそうですよ!

企業の時価総額は、ある時点(資料では2008年末)での株価 X 企業の総株式発行数になりますから、日々変動はします。株価形成の基本は、企業の総資産になるのでしょうが、実際の株価には、その企業の将来性が大きく影響します。

そのような初歩的な観点から見ましても、時価総額トップ31社に占める米国企業の数には驚かれるかもしれません。何と、米国企業13社が入っており、しかも、1,3,4,5,7,8,9,10位を占めるのです。
次に大きいのは中国企業で、2,3,6,18位をしめる4社が入ってます。英国企業も4社あり、4番目に多いのはスイスで、3社になります。

その中の日本の企業は?

さて、わが日本の企業はどうかと見ますと、トヨタ一社が辛うじて25位の位置にいるだけ!? 漠然としたイメージと違っていませんか?

上位10社の業種は、石油・天然ガス、小売(ウォルマート)、電気通信、ソフトウエア、銀行(中国)、医療です。石油・天然ガス以外は、日本にも活躍している大手企業はありますが…

世の中は、我々が漠然と抱いているイメージとは違うようですね。

順位 企業名 国 (地域) 主な産業 時価総額
(百万米ドル)
1 エクソンモービル アメリカ 石油・天然ガス 406,607.00
2 ペトロチャイナ 中国 石油・天然ガス 259,836.20
3 ウォルマート アメリカ 小売 219,898.10
4 チャイナ・モバイル 香港 電気通信 201,219.60
5 プロクター・アンド・
ギャンブル (P&G)
アメリ 一般消費財 184,576.20
6 中国工商銀行 中国 銀行 173,930.90
7 マイクロソフト アメリカ ソフトウェア 172,929.80
8 AT&T アメリカ 電気通信 167,950.40
9 ジョンソン・エンド・
ジョンソン
アメリカ 医療 166,002.20
10 G E アメリカ コングロマリット 161,278.30
11 ロイヤル・ダッチ・
シェル
英国 石油・天然ガス 158,912.70
12 シェブロン アメリカ 石油・天然ガス 150,291.50
13 ネスレ スイス 食品 149,691.90
14 バークシャー・
ハサウェイ
アメリカ 保険・投資 149,600.20
15 BP 英国 石油・天然ガス 141,683.20
16 Roche スイス 医療 132,621.40
17 ノバルティス スイス 医療 130,893.10
18 中国建設銀行 中国 銀行 128,264.70
19 トタル フランス 石油・天然ガス 128,210.90
20 ファイザー アメリカ 医療 119,417.20
21 JPモルガン・
チェース
アメリカ 銀行 117,681.20
22 HSBC
ホールディングス
英国 銀行 115,216.70
23 IBM アメリカ コンピュータ 113,065.30
24 BHPビリトン オーストラリア
/英国
鉱業 112,284.60
25 トヨタ自動車 日本 自動車 110,495.40
26 GDF Suez フランス エネルギー 107,680.30
27 フォルクスワーゲン ドイツ 自動車 106,807.90
28 フランス電力公社 フランス 電気 105,118.60
29 ボーダフォン 英国 電気通信 104,866.10
30 コカ・コーラ アメリカ 飲料 104,734.60
31 テレフォニカ スペイン 電気通信 103,667.50
                         

慈善事業=施し              New York Times May 29