エンジンオイル

経験と雑学的な知識で判断するエンジンオイルの選び方と交換時期に関する考察

エンジンオイル注入中

(注意: 軽油使用のエンジン、ロータリーエンジン、スバルの
ボクサーエンジン及び外車は未経験ですので、このコラムは参考にならないかもしれません。また、色々なエンジンオイルを試すことが趣味の方や専門的知識を得たい方は、エンジンオイルに関する沢山のサイトの中へ入っていってください。ウェキペディアにもあります)

どのような方々の参考になる可能性があるかと申しますと;

  •  年間5千〜1万キロ程度の走行で、新車から11年間乗る
  •  年に数回高速道路を使った長距離(片道500キロ前後)ドライブ
  •  年に数回山道ドライブ
  •  時々、高速料金所から本線進入時や山道でレッドゾーン近くまでエンジンを回す
  •  長距離ドライブで、数回、最高速か燃料カットされる速度まで上げる

ような一般的な使い方をされる方々です。
オイルの劣化が早くなるシビアな条件では;

  •  短距離走行(4〜5キロ程度)が多い
  •  頻繁にレッドゾーン近くまで回す急加速を繰り返す

の2点だけを考慮すれば良いのではないでしょうか。理由は省略させて頂きますが、上記2項目は、オイルだけではなくエンジン自体にも悪いです…それでエンジンが壊れてしまうことは無いでしょうが。

でも、何れにせよ、今までの話は新車を2〜3年で買い換えてしまう方々には関係のないことです(^_^)

エンジンオイル交換の基本

さて、それでは具体的にエンジンオイルの話をしましょう。
自動車を購入した時点で、当然のことながらエンジンオイルは入っています。新車の場合は、自動車メーカー指定の純正オイルが入っています。
この純正オイルの種類に無頓着なディーラーが多いことにビックリします。

エンジンオイル交換の基本は、新車に入っている純正オイルを使用することです。
例えば、トヨタキャッスル"0W-20"(SEA粘度表示)が新車に入っていたのならば、次のオイル交換もトヨタキャッスル"0W-20"になります。決して、"5W-30"とか"10W-30"にするべきではありません。1千キロ走行後にオイル交換する場合は、指定の純正オイルにするべきです。初期不良対策もありますが、この純正オイルを使用したエンジン音がオイル選定の基準になりますので…
なお、"5W−30"指定の車に耐熱温度を上げるため"5W-40"のオイルを入れると重くなるので"0W−40"のオイルを入れれは良いう方もいますが、お薦めしません。実際に試してみると分かりますが、例え耐熱温度が上がったとしても、低速時のトルクが落ちるように感じます。

純正オイルと車ディーラー

横路に逸れますが、オイルの表示に関しては自動車の説明書にも書かれてる筈ですが、オイル・メーカーのサイトには、より分かりやすい説明があります。
ここでは簡単に、"W"はウインターを意味し、10Wは冬場の粘度を表しており、右側の数字は高温時の粘度を表しています。数字が大きいい程それだけ粘度も上がり、抵抗も増えると考えて下さい。

  •  5W  低温時の粘度
      |
  •  30  高温時の粘度

意外と思われるかもしれませんが、耐熱温度は気にしなくて良いです…サーキットに持ち込んで楽しむのでもなければです(^_^) 市販されているオイルを選ぶ際に、純正の指定オイルと同じ表示…例えば"5W-30"…のオイルを選んでおけば問題無いはずです。

新車に入っているオイルの種類をディーラーに聞いてもハッキリせず、不安な場合は、自動車メーカーは「お客様相談室」のような窓口をもってますので、そこに電話して聞けば分かります。

注意しなければならないことは、交換用のオイルは一種類だけというディーラーがあるということです。その場合は、"10W-30"になります…ターボ車にも使えて汎用性が高いグレードです。理由は単純です。ディーラー自身のための経費節減です。それでも強く頼めば、新車に入っているグレードのオイルを準備してくれる筈です。場合によっては、価格の差額を要求されます。"10W-30"は一般的に一番安いオイルなんです。

"0W-20"の仕様車に"10W-30"がダメな理由

近年のオイル性能とエンジンの加工精度はかなり向上してきており、低い粘度のオイル
("0W-20"とか"5Wー20") と小さいクリアランス(シリンダー壁とピストンリングの間の隙間)が一般的になってきています。(ターボ車は除きます。しかし、ターボ車でも、"10W-30"から”5W-30" に粘度が下がってきているように思います)大きな意義は、環境対策にあります。具体的には、オイル消費効率と燃費の向上です。低粘度仕様車に"10W-30"のような高粘度のオイルを使いますと、エンジンに負担が掛かりすぎて、せっかくの環境対策車が燃費も悪くなり目的を達成できなくなるのです。

しかし、逆も真なりで、10W-30指定のエンジンに0W-20とか5W-20のオイルを使ってはいけません。この場合、本当にエンジンあるいはターボが壊れてしまうかもしれません。

(欧州車は日本車よりもクリアランスが大きく、そのために指定のオイル粘度は高いものでした。従って、オイル消費も高く、燃費も悪いというのが一般的でしたが、最近は、だいぶ改善された車も一部出てきているようですね)

オイル交換時期 (オイルエレメントも一緒に交換します)

新車の説明書に記載されている期間または走行距離数で問題ない筈です。(中古車で説明書が無い場合は、上記で言及した窓口に電話すれば教えてくれる筈です)
エンジン音とアクセル・レスポンスを気になさる方は、1年又は7〜8,000キロ走行の早い方で交換するのが良いでしょう。

乗っていて、それ以前に交換したくなるようなオイルでしたら、(純正オイル以外の場合)オイルの性能自体が不足しているか、ご自分の車のエンジンとの相性が悪いか、または、ご自分の要求が高すぎる(^_^)かの何れかです。

念のために、オイルを抜く(排出する)時に、オイル・レベルゲージの穴から吸引するケースとエンジン下部のドレイン口から抜くケースがあります。今ではどちらでも良さそうですが、エンジンの種類…車種によって選ぶ場合があります。車種によってどちらが良いかは、ディーラーやオートバックスやイエローハットなどは知っていると思います。

昔は、新しいオイルをゲージレベルの上限以上に入れるところ(ディーラーでさえも)が一般的でしたが、今では上限から7〜8割程度に抑えるのが一般的になったようです。オイルを多く入れすぎますとエンジンに余分な負担が掛かり、誤作動の原因にもなりやすく、良いことは何もありません。

オイル状態のチェック方法

比較的に神経質な方でしたら、走行条件によってオイルの劣化速度は変化しますので、もっと実質的な交換時期の確認方法をとるかもしれません。それは、燃費の悪化、エンジン音、オイルの性状をチェックする方法です。燃費チェックは、毎日通勤に使っているような場合は良さそうですが、月に数回しか乗られない方には不適切かもしれません。

私は、まずエンジン音の変化が気になり始めたらオイル性状をチェックします。速度が時速40キロ未満で騒音が比較的小さい状態の時のエンジン音と加速時のエンジン音がチェック対象です。そのためには、まず、オイル交換して間もない時期の(運転中の)エンジン音を記憶しておく方がイイですね。エンジン音の変化は微妙な感覚的なものですが、低速で軽くアクセルを踏んだ時にザラついたようなチョット不快なエンジン音がし始め、加速時の音も大きくなってきたような気がし始めた時にオイルチェックをします。但し、オイル交換後からザラついたようなエンジン音のする車(オイル)もありますので、その場合は、その音が耳障りになり始めたときですね。

オイル性状チェックの方法は簡単です。
まず、ティッシュペーパーを数枚取り、二つか四つ折りにします。車のボンネットを開けてオイル・レベルゲージを抜きます。(車の説明書でゲージの場所が分かります。真っ直ぐに抜くだけです)そのゲージの先端を折りたたんであるティッシュペーパーの中央に軽く触れさせます。オイルがティッシュペーパーに染み込み広がってゆきます。オイルが染み込んだ表面をよく見て、色が斑になっていたり、何となく表面に小さなブツブツがあるように見える時は、オイルの換え時です。
そのような時は、走行距離や期間に関係なく、躊躇無く交換します。どんな製品でも、製品ロット間の品質ブレや不良品があるものですから、柔軟に対応する必要もあります。
中には、新車で不良品をつかまされた方もおられるんじゃあないでしょうか!?

オイルの基本機能

さて、オイル選択のお話をする前に、念のためにオイルの基本機能に関して簡単にお復習いをしておきたいと思います。但し、これは余談の部類で、オイル選択のための知識として特別必要というわけでもありません。ですから、ご興味のない方はスキップして下さい。

  • 潤 滑
    なんたって、オイルの第一イメージですよね。
    エンジンの材質は、鉄やアルミの合金です。シンリンダ壁とピストンリングに代表される金属同士の摩擦が常時発生している箇所がエンジンには沢山あります。

    金属同士の摩擦と言いますと、日常で触れる金属のツルツルした滑りやすいイメージから たいしたものではないと思うかもしれませんね。
    ところが、金属同士の摩擦係数は大変高いのです。つまり、二枚の金属板を合わせてず らすためには、大きな力を必要とするということです。電車の車輪とレールの関係を思い出すと良いかもしれません。あの金属車輪が鉄のレールの上でツルツル滑りそうですが 実際には、滑るどころか、あの大きく重い車両をグイグイと運んで行きます。

    従って、エンジンの金属同士の摩擦が発生する箇所がスムーズに動くためには、オイルによって滑りやすくする必要性がでてくるわけです。性能の良いオイルほど、この潤滑性 能も高くなります。それだけエンジンも軽快に動きますので、燃費改善されます。
    エンジンに合った性能の高いオイルを使用しますと、ガソリン1リッター当たりの走行距離 が1〜2キロ伸びます…と言っても、走行条件にもよりますが(笑)
  • 冷 却
    エンジンは、ガソリンや軽油を燃焼(爆発)させて動力を発生させていますので、当然、熱が発生します。従って、ある程度冷却してやりませんとエンジンが焼き付いてしまいます。焼き付くということは、シリンダー壁にピストンリングが最悪くっ付いて動かなくなってしまうことです。高速道路でマニュアル車が焼き付けを起こしてしまうと、突然ブレーキが掛かり、駆動輪がロックしてしまうような状態になるしょうから、大事故につながります。

    エンジンの冷却と言いますとラジエーターが思い浮かびますが、ラジエーターは発熱したエンジンを周囲から冷やすというイメージですね。オイルの場合は、摩擦箇所の発熱自体を抑制するとともに、循環することによって冷却を行うという働もをします。

    これは、二重の意味で重要です。一つは、摩擦が発生する箇所の焼付を防ぐということで、二つ目は、その箇所が高温になりすぎてオイル自体が部分的に燃焼してしまうことを防ぐということです。
  • 清浄分散
    オイルには、エンジン内部の汚れを洗い流す機能も必要です。オイル交換時に排出されたオイルを見ますと、黒ずんだ色で如何にも汚れているように見えます…実際に汚れているわけですが(笑)

    エンジンは燃料を燃やして(爆発させて)いるわけですから、燃えカスや発生ガス等でエンジン内部は汚れてゆきます。勿論、オイル自体もエンジンの熱で部分的に劣化・変質してゆきます。ポピュラーな言葉で、カーボンスラッジが堆積すると言われます。(汚れはカーボンスラッジだけではありませんが…)

    このような汚れがエンジン内部に過度に堆積しますと、簡単に言って、エンジンが不調になり、最悪、焼きついたりすることになるのです。
    これを防ぐために、オイルはエンジン内部を循環しながら汚れを洗い流しているのです。

    しかし、オイルは、毎回交換される洗濯機の洗浄液(セッケン水)とは違い、交換サイクルは一般的に5千から1万キロ走行ごとのようです。(交換サイクルは後で言及します)そうしますと、その期間は、オイルの潤滑・冷却性能が一定レベル以上で維持される必要があります。

    そのような性能が損なわれないように、オイル中の汚れの大き目の粒子はオイルフィルターで除去されて、フィルターで除去できない微小な粒子は、オイル中に均一に分散されるのです。オイル中の汚れが一部分に集中するとしますと、オイルのその部分の性能は極端に落ちてしまいますから、出来るだけ均一に汚れを分散して部分的な性能劣化を防ぐわけです。これがオイルの分散性です。
  • 気密保持
    これもオイルに求められる重要な機能です。
    エンジンのシリンダーとピストンリングの間にはクリアランス(隙間)があります。クリアランスがなければ、潤滑用のオイルが入っていきませんから、ピストン運動させるために必要な力は、相当大きなものになります。実際に、エンジンとして機能しないでしょう。

    しかし、クリアランスがありますと、シリンダーとピストン上部で作られる燃焼室で爆発したガスがクリアランスから漏れてゆき、爆発効果(ピストンを押し下げる力)が落ちて、出力が上がらないことになります。

    この問題を解決するのがオイルなのです。
    オイルが、シリンダー壁とピストンリングに潤滑性を与え、しかも、その隙間を埋めるです。隙間を埋める目的だけなら一般的に粘度の高いオイルほど効果的なのですが、オイルの流動性が悪くなるためエンジンに掛かる負担(負荷)が大きくなり、出力が落ちることになります。エンジン回転が伸びない、吹け上がりが悪いとか言われます。
    従って、適度のバランスが要求されます。

    近年では、このクリアランスが、鏡面仕上げとか言われる精密な加工技術の適用によって狭くなってきています。特に、日本車はそうです。
    目的は、燃費とオイル消費の改善による環境対策です。クリアランスが大きいと、燃焼室にオイルが混入して燃える率が上がりますので、交換時期までのオイル消費が大きくなります。また、粘度の高いオイルが必要とされますので、エンジンの負担が大きくなり、燃費が悪くなります。一般的に欧州車には比較的最近までこのような傾向がありました。
  • 防錆防食
    最後は、金属一般に必要とされる錆と腐食対策です。酸キャッチャーと呼ばれる数種類の添加剤が使用されているようです。重要な機能の一つですが、詳細は割愛させて頂きます。

それでは、どんなオイルが自分の車と相性が良いのかを、次のページで考えてゆきましょう。

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