第7回
コンビニの搾取世に蔓延るコンビニのお話しです。
町の至る所にコンビニなるものがあります。コンビニのない所には住めないという若者達もいます。確かに便利ですね。
しかし、コンビニが全く見当たらない地方もあるんですよ。三重県や宮崎県などの海岸沿いの地方は殆どコンビニがありません。沖縄県に至っては見た記憶さえありません。つまり、無くったって酷く困りはしない代物なんでしょう。

脱サラしてコンビニのオーナー(お店の主人)になる方も多いようですが、仕事は想像以上に大変そうです。何しろ24時間営業で思った以上にやることが多く、極端に言えば、自分の時間は入浴・食事・睡眠だけのようです。二階があって、そこに寝泊まりしている方々はまだイイと言えるのかもしれませんが、通いの方々は通勤時間だけではなく、何かあったときには駆けつける時間も取られます。
それでも脱サラして良かったと思っておられる方々はいるんでしょうか!? まあ、いないってことは無いんでしょうが…サラリーマンを続けられないとかコンビニの仕事が好きだとかいう理由でもない限り、収入上でさえ有利な仕事とは言えないようですから、後悔なさっておられる方々が多そうですね。

ファミリーカーに乗った4人家族奥さんがおられる方は当然奥さんも一緒に店で働きます(これを条件にしているコンビニもあるようす)。奥さんが家庭内の世話を焼くのは最小限になってしまいます。家族そろっての旅行など、勿論、夢のまた夢という状況に置かれます。アルバイトを増やして楽をする?昔、喫茶店は夫婦で働いてやっと食べいけるぐらいが一般的と言われていた時代がありました。コンビニも似たり寄ったりです。でも、コンビニの方が悲惨です。なにしろ24時間営業で馬車馬のように働くわけです…細々と生活できる程度の収入があればイイなんて本部が許してくれる筈もありません…どうしても売り上げが低迷する店は閉鎖の運命ですので…
それでも結果に納得できれば頑張り続けられるのでしょうけど。

コンビニのオーナーになるためにフランチャイズ契約をします。要するに、ブランド営業ノーハウの使用とその対価=ロイヤルティーの支払いに関する契約です。実際には、店の運営・営業は全てコンビニ本部の末端組織として決められた方法に従う形になります。
契約時に、持ち出し禁止とされる分厚い書類を2時間程度で読まされるようです。そこには店を運営してゆくためのノーハウや諸条件の詳細が記載されているようですが、とても素人が即座に理解できそうな内容ではないようですね。契約後もその分厚い書類のコピーは頂けないようですので、後で狐に抓(つま)まれるようなことになる場合があるようですね。

読書後=全て理解と了解が得られたことを前提として、契約の運びとなります。契約書自体は2ページ程度の簡単なもののようです。
これで契約は締結され、後はバラ色の将来を夢見るだけです…頑張りましょう、と本部の連中は曰(のたま)うわけです。

ところで、セブン・イレブンという会社があります。元々の親会社だったイトーヨーカ堂を既に超えてしまった優良会社ですよね。子会社が親会社を超えてしまうということは、そう珍しいことではありません。近年ではドコモがあります。富士通は富士電機の子会社で、富士フイルム(株)はダイセル化学工業(株)の子会社でした。
そのセブン・イレブン本部の粗利益(荒利)は、率で何と70%を超えているんです!? エッ、何驚いているかですって?だって、荒利で70%超ですよ!あの超優良企業のトヨタですら20%台だというのにです。

ご承知のように粗利益(荒利)の計算は単純です。1000個の商品を1個1000円で仕入れて900個を1個1300円で売った場合の荒利は、売上金額(900個 x 1300円=1,170,000円)から売った900個の仕入れ原価(900個 x 1,000円=900,000円)を差し引いた金額(1,170,000円 - 900,000円=270,000円)ということになります。粗利益率(粗利益÷売上金額)は、270,000円÷1,170,000円X100≒23%となるわけですね。
しかし、ヤッター、もうかったぞ!と喜ぶのは早すぎるかもしれません。商品を売るためには仕入れ費用だけではなく店を運営・維持するための色々な経費が掛かっています。さらに、残りの100個が売れ残ったとしますと、100個 x 1000円=10,000円を損したことになります。その上、その100個を廃棄処分することになり、簡単には廃棄できない場合は費用もかさんでしまいます。
つまり、それらの経費を差し引いた残りの営業利益がどれ程かが重要です。営業利益がマイナスになることだって珍しくありません。

セブン・イレブンとフランチャイズ契約をしたオーナーさんの取り分は、粗利益の40%となっています。セブン・イレブンが60%を取るわけです。他のコンビニには節操が少しはありそうで、例えばファミリーマートは50/50のようです。(記憶違でなければ、タクシーの場合は乗務員が60%でタクシー会社の取り分が40%だった筈ですから、セブン・イレブンはその逆なわけです。勿論、業界が違いますので何とも言えない部分はありますが…)セブン・イレブンのブランドとノーハウにはそれだけの競争力と価値があるというわけで、非常に強気です。

さて、その強気が契約の付帯事項にも表れているようです。

コンビニは、スーパーのように賞味期限が過ぎようとしている商品を安売りすることはありませんよね。弁当などはイイ例です。安売りせずに廃棄処分してしまいます。販売営業としては理想の方針かもしれません。あくまでも「安さ」ではなく「便利さ」を付加価値としてサービスする戦術ですので、安く売って拡販するというスーパーとは異なります。清掃車で仕事中まあ、安く売ったからといって絶対需要が増えるとは言えませんので分かりますが、ただ、安易に廃棄処分にしてしまうことは反社会的な行為のようにも思われますよね。もったいないし、環境問題=ゴミ処理という大きな社会問題にもつながります。
その廃棄処分は反社会的行為もさることながら、店舗のオーナーに取っては死活問題にさえなりかねないのです。

荒利をセブン・イレブンと店舗のオーナーとで60/40に分けるということは、契約段階で明確に認識されていることですから問題ないのかもしれません。しかし、廃棄処分される品代と廃棄処分費用は店舗のオーナー負担になることまでは契約段階で明確に認識されてはいないようです。
売り上げが平均レベル前後の店舗が出す1ヶ月の廃棄コスト(品代+廃棄費用)は、経験の長いオーナーでも50万円前後になるようです。総売上高に対しては大した金額ではないでしょうが、オーナーが受け取る荒利の40%に対しますと大きな金額になるので、たまったもんじゃありません。

しかも、その廃棄処分される商品の仕入れ原価にはセブン・イレブンの大きい利益がしっかりと含まれているのです。ですから、廃棄処分が大きく出れば出るだけセブン・イレブンは利益が上がるわけです。まあ、それだけオーナーの首が絞まってゆくわけですからセブン・イレブンも極端なことはやらないんでしょうが…

エッ、廃棄処分が出ないように仕入れればイイじゃないかとおっしゃるんですか? 確かに理屈上はそうです。
しかし、不特定多数を対象とする客待ち商売の場合は不確定要素がありすぎて需要予測は至難の業なんです。また、たびたび品切れを起こしたり品揃えが少なかったりすると、店の信頼性を失ったり、客に品選びする楽しみを与えれないことになり、結果的には客足が遠のいてしまいます。さらに、店の商品棚に12時間商品が無かった場合は欠品(品切れ)ということになり、本部は大きな問題と捉えてしつこく仕入れの増量を迫ってきます。値下げして在庫処分することも許されません。そんなこんなで、廃棄処分は多目に出てしまうわけです。

やはり、問題は店舗のオーナーが100%負担しなければならないことにあるようです。この負担もせめて60/40にするべきなんでしょうね。
大きく儲けている企業が良心的である筈がないと再認識させられたしだいです。



New York Times May 29                      米国の肥満