バストダーツの分量は
何によって決まるのか?

(前頁へ)



前項(トルソー原型とウエスト原型の相違)で説明しました様にミッチェル式のウエスト原型ではバストダーツが除外されて描画された為にバスト線は水平ではなく、下方向に曲げられて描かれました。
バストの寸法採寸では水平に計測されたバスト線はパターン上では水平でなく、従ってウエスト線も水平ではない事になります。

ミューラー式のトルソー原型では最初からバストダーツは設定されてバスト線は立体の体型の様に垂直・水平の関係を保っています。するとトルソー原型には何らかの方法でバストダーツの分量を決定する考え方がある様です。その方法、考え方は一体何から出て来るのでしょうか?の説明が此の項目的です。


トルソー原型の製図の復習

○ ミューラーのトルソー原型の描き方ではどの様な製図の順序であったか、を確認すると・・・次の様な操作を行いました。


(1) 体型枠の前中心線から前衿ぐり巾を取り、脇のネック・点(SNP)を決めます。その(SNP)〜Bp の長さをコンパスにとり、Bpを中心にSNPの左側に円弧を描きます。

(2) 重心線より直角線を出して後首巾寸法をとって垂直線を重心線と平行に引きます。先の円弧との交点を求めてHs 点とします。

(3) Bpから垂直線を引き、H点からの水平線との交点をV1とします。H - V1 - Bp の線を薄紙に写してBpを中心に左へ回転させ、H - Hs を合致させてHs−V1'- Bp を描きます。

(4) V1 - Bp - V1'の角度が肩線からBp への『バスト・ダーツ』の分量です。

(5) 重心線上から後首巾と同寸法の点に垂直線を引き、その上にBpからH - Bp の長さ(乳丈)をとれば HS点が得られる、と云うのが この操作のポイントです。

パターンの前後の肩線を合わせたのは何故か?

この操作の意味が判れば『何故その様な操作が必要か?』と云う理由が判ります。凡てパターンの操作にはそうしなければならない理由があるのです。それを理解出来ると色々な問題に直面した際に解決策を思い付く事が出来、其れがパターン作業の面白さなのです。


前後の身頃の肩線からのダーツを他の部位に移動させて肩線を合わせると図のようになります。

すると図の様に前身の重心線は垂直なのに前中心線は左側に傾斜し、バストダーツは閉じて前中心線側に移動し、バスト線は前方向に開いてバストダーツは移動しました。

バスト線は脇側は水平ですがBpより前側は上方向に曲がっていて、ミッチェル式では脇から下方に曲がっているのとは逆になっています。肩線では前のNpから肩点は横方向にほぼ水平な直線(前肩巾)を描いています。

バスト線の方向性と肩線の方向性の食い違い

以上の操作で前後の肩線を縫い合わせればSNPは体型上の同一の点であり、肩線、肩先点も同じポイントである事がよく判ります。前後の肩線を合わせたのは前後の肩線はお互いにどの様な関係になっているか?を確認する為でバスト線を『横一本』に開いて描いたパターンでは肩線が前後に区分されてその巾方向の繋がりとバスト線との関係がりがよく理解できないからです。

バスト線は体型の周囲をぐるりと巡って計測するので紛らわしいのですが、立体として考えれば、巾方向と厚み方向の双方の方向性(ベクトル)が混在して構成されています。




バスト線は
後中心線→背巾線→(脇線)→重心線→BP→前中心線 と四つに区分されます。
前巾は(F部分)(S部分)と二つに分かれ、次いでカマ巾、後ろ巾となります。





何故前巾は(F部分=a)(S部分=b)の二つに分けたか?と云うと立体としては方向性が異なるからです。

先に述べた様にバスト線は高さの方向性を別とすれば『巾方向と厚み方向』の二つの性質を持つ基準線です。
然し肩線は巾方向のみの性質の部位です。パターン上では双方の性質を持つ線を同一の平面上の前中心線と重心線との間に描かねばならない、と云う事になります。
その為にバスト線に対応する肩線は途中で切り開かねば(ダーツを入れなければ)肩線とバスト線の双方を図形は描けません。

以上の様な理由でパターンの描画では前後の中心線をバスト線で結び、それを後巾、カマ巾、前巾と分割し、更にBpの位置をきめます。
次いで後ろ巾では後首巾に続けて後ろ肩線(後首巾+小肩巾)を描き、前巾には前首巾に続けて前肩線を描きますが、その前に重心線より後首巾の間隔を取って垂直線を引き、その上にBpから乳丈の長さをコンパスで取ってHS点を求める、と云う操作を行ないます。

前巾はBpを挟んで『F部分+S部分』と合計されて描かれるので長く、肩線はより短いので二つに区分されてバストダーツが挿入され、双方が描かれます。
これが組み立てられれば前S巾は前方向に突き出て前F巾と繋がり、立体上では肩線と組み合わされる事になります。

バストが大きくなるとバストダーツが増大する理由

バストサイズが大きくなるとバストダーツも大きくなりますがそれはどの様な理由なのでしょうか?が次の課題です。
それはバストが大きく増加する際は凡ての部位が等しく増加するのではなく、部位によって増加の比率が異なるからです。
バストの増加する分量の比率は先の区分ですと後中心線→背巾線→(脇線)→重心線→BP→前中心線と四つに分けましたが、此れに 増加比率を割り当てますと次の様になります。
D(後巾)〜0.3
C(カマ巾)〜0.2
S(前S巾)〜0.3
F(前F巾)〜0.2 となります。
例えばバストが10.0 cm 大きくなる場合は半身の5.0 cm に比率を乗ずると増加量が算出できます。
D(後巾)〜5.00×0.3= 1.5 cm.
C(カマ巾)〜5.00×0.2 = 1.0 cm.
S(前S巾)〜5.00×0.3= 1.5 cm.
F(前F巾)〜5.00×0.2= 1.0 cm.

方向性で区分しますと
*巾の方向=後巾(1.5).及び、前F巾(1.0)
*厚みの方向=カマ巾(1.0).及び、前S巾=(1.5)となります。

一方肩線と後首巾の拡大量はどうでしょうか?
肩線はバストが10.0 cm 大きくなる場合は5.00×0.2 = 1.0 cmとなります。また後首巾は5.00×0.1 = 0.5 cmとなります。
すると先の図で当てはめると重心線からSNPの距離は0.5 cm 大きくなるのにバスト線の厚み方向の前S巾(重心線→Bp)は1.5 cm 大きくなります。
前身全体で見てもバスト線の前F巾の拡大は5.00×0.2=1.0 cm ですから前巾は合計2.5 cm 大きくなるのに肩線の拡大は1.0 cm となり、其の間の開きは後首巾の拡大量の3倍の開きが出てきます。
これがバスト10.0cm 拡大した場合のバストダーツの増加量となります。
(註)バスト寸法の拡大の比率は別項『グレーデイングPt計算の進歩(11B)』を参照下さい。

後肩ダーツの場合は?

後肩ダーツの場合はどうでしょうか?と云う問題に触れて置きます。
体型の背面ではあまり大きな変化は起きません。と云うのは後肩巾と背巾の関係では肩甲骨の膨らみだけで寸法的にはそれ程大きな差は生じないからです。


バスト 80.0 cm の体型の場合、バストの標準バランスは後巾=15.0 cm,カマ巾=9.0m,前巾=16.0 cm.です。それに緩みを最低1.5,cm,1.4,cm 1.6cmを加えます。
後巾は15.0+1.5 = 16.5 cm,になりますがこれは後中心線から肩甲骨のポイントを通って背巾線までの背巾寸法と等しい寸法です。
後肩巾は19.5 cmですから 3.0 cm 程背巾線の外側に位置します。此れは体型の構成上必ず3.0 cm,程、外側にあります。

後肩線の製図はSNPのh点から水平線を引いて背巾線の位置で 3.5 cm を下にah'点を取り、h−ah'を結んで肩線の傾斜を描き、其の上に後ろ首巾の中央のCNP、E点より後肩巾を19.5 cmを取ってah’点とします。



















この肩点 ah 点の位置は袖底線より後肩丈を取ると1.5 cm程高過ぎて届きません。これは肩甲骨が高く膨らんで背巾の長さを広げているからです。その分量が後首ぐりのE点からの後肩点の位置と袖底線からの位置との開きになって表現されてしまうのです。

図では袖ぐりから肩甲骨点へ向けてダーツが開いた形になっていますが通常はh - ab'の小肩巾線に直角線を下ろして交点をM1とし、肩点側を開き、ダーツとします。

肩周りの緩みのコントロールは?

私どもは通常『緩み』はバスト線の計測値に加算し、製図を行います。肩線には生地やアイテムによって寸法を加えますがその場合には肩点より外側に落ちる事になります。それは洋服は肩から前後に垂れ下がって着られるからです。然しバスト線への緩みの加算に対して肩周りのシルエットが窮屈ではバランス的にはゆったりした感じは出ません。

その様な場合、左図の後ろ肩丈のダーツを無くして後肩点からバスト線への『緩み』に加える事があります。すると肩甲骨の膨らみを後肩の『緩み』としてユッタリとした肩周りになります。

その場合肩線の前側にも後ろに呼応して『ゆとり』を入れて前後の肩の周囲のバランスを取ります。それには先の 重心線から後首巾を取ってHs点を決める際に『後首巾+X cm』の緩みを加えます。そして前肩丈に後肩丈に加えた 『ゆとり』と同量の緩みが入るように肩丈を増やし、Hs点を前側にずらします。

この操作は前後の肩丈に『ゆとり』を加えると同時にバストダーツを狭め、胸巾に『ゆとり』を加えます。後肩丈の『ゆるみ』、前肩の重心線からHs点への『ゆるみ』のバランスと調節は前身頃のバストポイントから脇側のシルエットが適当であるかどうかを判断し、調整する場合の目安になります。

シルエットは衣服が着用された際に体型から離れた『ゆとり』部分の造形で体型そのモノをイメージさせる、とも呼べるものですからこの『ゆとり』の加え方はパターンメークの重要な操作です。


Ladie's Patan Cutting のホームページ (ホームへ)

(次へ) (ページTopへ)