原型の作製(2)

肩線の設定とバスト・肩甲骨ダーツの分量の設定

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前後の肩線の設定

後ろ肩線の設定

  • 先に肩先点の高さを決める為に a より 1.5 cm 下に水平線を引き、其の上にEから後ろ肩巾の長さの円弧を振り、交点を ab 'としました。


  • これは上図のように前後の肩線をダーツ分量を閉じた状態であわせると肩の角度によって図のように開きます。


  • その間隔は標準の体型でネック・ポイントの水平線から前身頃の肩先点は 4.5 cm,後ろ身頃の肩先点は 3.5 cm です。


  • 後ろ身頃の首丈は 2.0 cm ですので差し引き 1.5 cm の高さに来ることになります。


  • この ab の位置は後ろ中心線からダーツを閉じた状態での肩先点の位置ですが、一方バスト線からの高さの位置はどうでしょうか?


  • 次に Bw から ah へ(後ろ肩丈+緩み)をとり、円弧を振りましたが、バスと線からの高さはこの円弧上にあるはずです。


  • つまり肩先点の位置は後ろ中心線からとバスト線からの二つの関係があり、それを夫々計測値に従って求めたことになります。


  • 肩先点は立体上では同一の点ですから平面上での二つの点は肩甲骨のダーツ分量によって描かれた訳でこのギャップが後ろ肩線のダーツ分量になります。


  • 従って肩の高さや肩丈の長さによって後ろ肩線のダーツ分量は決まるので X cm と予め決まっているわけではないのです。この方法は 前身頃の肩線でも同様です。

前肩線の設定



  • H1〜 H3を結んで3等分し、H3 から一つ目を目安にしてH〜 H2 を曲線で結び、前衿ぐり線とします。


  • 重心線から右へ後ろ首巾(緩みを入れない)を取り、短い垂直線を引きます。後ろ首巾を用いる理由は後ほど説明します。


  • H〜 vl〜 Bp を別紙に写し、Bp を押さえてH が垂直線に交わるまで左に回転させ、交点を Hs とします。Hs は前中心線から見た 脇のネック・ポイントです。


  • 重心線では Bg から前肩丈+緩み分量をコンパスにとり、Bg〜 Ah の短い円弧を脇側に振ります。


  • 後ろ身頃の h〜 ab' をコンパスにとり、前身頃の Hs から先ほどのBg〜 Ah の円弧に振り、交点を Ab とします。


  • Hs〜 Ab を結びますと後ろ肩線になります。先ほど別紙で振った Hs vl' Bp の軌跡から vl' Bpの線を転写してHs〜 Ab との交点を( f ) とします。


  • Hs〜 vl'〜 f〜 Bp を元に戻して( f )の位置を(e) としてH〜 e を結びます。


  • 結果として後ろ肩線はH e, f Ab に分かれて、e〜 Bp〜 f  のバスト・ダーツの分量が出てきます。


  • 先ほどの前身頃の脇のネック・ポイント Hs の位置を取るのに重心線から後ろ首巾の分量を取りましたが、その理由を説明します。


  • 前後の身頃のダーツを閉じた状態で図のように肩線を合わせて見ます。前身頃の重心線に直角線を 降ろすとネック・ポイントを中心にして→前中心線(前首巾)、→後ろ中心線(後ろ首巾)、→重心線の三つの長さが比較できます。


  • 前首巾は後ろ首巾よりやや短いのですが重心線までの長さは後ろ首巾に大略一致します。


  • それを利用して後ろ身頃の脇のネック・ポイントを決めたのです。後ろ身頃のように肩線の傾斜から4.5 cm 下に取る方法も考えられます が、前肩丈の円弧と近い為に不正確になるように思われます。


  • 前、後ろの首巾と脇のネック・ポイント及び肩先点以上のように、縦と横の体型基準線から特定できました。どちらもバストの分量や姿勢 よってダーツの分量は不定ですから正確なネック・ポイントの位置を設定するのは重要なポイントです。


袖ぐり線の記入とウエスト。ヒップの配分及びダーツの記入

    袖繰り線の記入

  • Bw 〜ah の後ろ肩丈+緩みを4等分し、Bw から一つ目の点をC, C から0.7〜 1.0 cm の点を C1 とし、ab〜 C1〜 S を繋がりのよい線で結んで、後ろ袖ぐり線とします。


  • Bg から上へBw 〜 C と同寸法をとり d 点とし、Ab 〜 d 〜 S を繋がりのよい線で結んで、前袖ぐり線とします。


  • Bw 〜 Bg を4等分し、その1/4 を Bg から上にとり aE,aE から左へ水平線をだし、前袖ぐり線との交点を Ae とします。Ae 〜 aEは 0.3 〜 0.5 cm くらいです。


  • 袖ぐり線は全体として『傾けた卵』のような滑らかな曲線で描かれるようにします。


    ウエスト・ヒップの配分
  • Wg から前へ前ウエスト+緩み(Wg 〜 t v )を取ると、tv 〜 Wf は前ウエストのダーツ分量になります。


  • Wg から後ろへ後ろウエスト+緩み(Wg 〜 th )を取ると、th 〜 Wc は後ろウエストと脇ののダーツ分量になります。


  • Gg から前へ前ヒップ+緩み(Gg 〜gv )を取ると、gv 〜Gf は前ヒップのダーツ分量です。一般的にはgv Gf は殆ど長さはなく、 Gf より前にはみ出るケースが多いのです。其の場合の超過分量はダーツ線を交差(ダブらせて)させて腹囲の分量を出すシルエットになります。


  • Gg から後ろへ後ろヒップ+緩み(Gg 〜gh )を取ると、gh 〜Gf は後ろヒップの交差分量です。交差分量は脇下と後ろヒップでダーツを 交差させて調整します。


  • この製図法の特徴は重心線を境界にウエスト・ヒップを前後に分けて配分し、前バストに対する前ウエスト・後ろバストに対する 後ろウエストと配分を立体化し、ウエスト線上下のダーツ線の一致させています。ヒップ線でも同様で従って体型の具体的な『形』に添った 分量配分になります。


  • これは体型曲面の膨らみ・くびれ、の表現であるシルエットを安定させる重要な要素で、衣服の『地ノ目線』がスッキリと下に落ちて 体型の微妙なラインを表現します。


ダーツ線の記入と仕上げ

  • tv 〜 Wf はバスト前巾に対して前ウエストの過剰部分ですからBpの直下でダーツ量として左右に配分し、BPと結びます。 tv 〜 Wf が 3.0 cm を超える場合は BP と重心線の中間に補助ダーツを取って振り分けます。


  • th Wc はバスト後ろ巾とカマ巾に対して後ろウエストの過剰部分ですから次の三つに分けてS,C,n,と結びます。


  • 脇下 1.5 cm = S の直下
  • 残りの2/3 = C の直下( Ww )
  • 残りの1/3 = M の直下( m )


  • 前ヒップの gv Gf はこの場合は少量なのでダーツを取らずに緩み分量とします。


  • 後ろヒップの G 〜 gh は後ろウエストに対する後ろヒップの超過分量でダーツとは逆に交差させて膨らませます。次の二つに分けて脇線、ダーツ線を交差させます。


  • 脇下 2.0 cm = S の直下 
  • 残りの全分量 = C の直下( A )


  • ウエスト線からヒップ線に向かうダーツ・脇線は腹部・腰骨・臀部の膨らみに合わせてダーツ止まり、交差位置を決めます。


トルソー原型の完成とポイント



    左図は完成したトルソー原型のパタンを軟らかい木綿の生地(トワル)で組み立てたものです。無理のない体形の滑らかな曲線が出ています。

  • このトルソー原型はその他のアイテム(ウエスト原型やジャケット・コート原型なぞ)の基礎になるもので、これを変化させて作製します。


  • この原型を描いた論理を理解すると他のアイテム原型作製は勿論、パタンの修正・変更・グレーデイング等の操作が理解できます。


  • 次に原型の書き方の『考え方』を纏めておきましょう。

@バランス計測によって得た計測値を体型基準線を基礎に配分すると前後の肩線やバスト・肩甲骨のダーツ分量は結果として出て来る。

A重心線の設定により、バストを巾と厚みに区分して、バスト線とウエスト線の前部分・後ろ部分をそれぞれ対比させると ダーツの分量と位置は結果として出て来る。

B同様にヒップ線とウエスト線の前部分・後ろ部分をそれぞれ対比させるとダーツの分量と位置は結果として出て来る。

Cこれは紙張り・平面展開で実験したように、体型基準線を軸に忠実に体型曲面を立体的に描いた結果である。

Dこの『考え方』を応用するとパタンの欠陥の変更・修正・サイズ変更の操作は自然に出てくるのでわかり易く、誤りなく容易になる。


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