CADとグレーデイングの緩みの問題(10)

立体グレーデイング発表の反響と質問の殺到(B)、
質問の内容についての分析と回答

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体型バランスと緩み

体型の寸法はヌードの計測値で構成されるが実際のパタン作成では必ず『緩み』が加えられ、出来上がったパタンの数値は 『出来上がり寸法』として扱います。

緩みの分量は最も体型に密着したシルエットで着用出来る最低限の量を基礎的な緩み量としてバスト80 cm の トルソー原型にたいして9.0 cm 1/2前巾に+ 1.6 cm, カマ巾に+ 1.4 cm,後巾に+ 1.5 cm 計半身で4.5 cm,全バストで+ 9.0 cm を基準として加算 しました。
緩みの分量に付いてはこれより少なくなる事は絶対に不要で(着用できなくなる・・)増加させる事が命題であります。

増加させる根拠は二つあり、
@はデザイン上の要望からの増減でこれは体型により密着下シルエットか、又は離れたシルエットか?で その時代に合わせて交互に波形を描いて表われます。
Aは『アイテム』による増減でジャケット、コートその用いられる生地の厚さ等、服種と素材の 選択に合わせて取捨されます。

この他に此処で提起するB『グレーデイングでの緩み』の問題があります。
それは体型の拡大は体型のバランス寸法のを対象に行なわれ、 『緩み』に対しては別に考慮される事無く移行されている事です。
下記の表のように バスト80.0 cm に対して加えられている緩みは 9.0 cm ですが バスト100.0 cm でも 9.0 cm、で緩みの比率は 11.3% から 9.0 % へと低減して参ります。

               

これは明らかに不合理ですが何故このような拡大が通常の事として行なわれて来たのでしょうか?実際に計算してみると非常に 困難な作業である事に原因があると思われます。計算機を使っても各部位のバランス数値の緩みを計算してPt表に書き入れ、それを各寸法毎に加算して各部位の 拡大分量と緩みの変動量を計算するのは極めて手数を要し、ミスを起こし易く実利的ではないと考えられたからでしょう。

それが原因でグレーデイングをパタンの『出来上がり寸法』で扱い、考える便法が行なわれる様になったと思われます。確かにパタン上は『出来上がり寸法』 で生産実務が進行する事は便利に思われますが、他方デザインによって加えられた緩みを含めてパタンが扱われる事は体型との関係意識を益々薄くして しまう事に繋がります。

CADの出現と可能性の拡がり

2000年代に入ってコンピューターの進化に伴い、パタンメーキングには多くの可能性が出てまいりましたがその『機能の拡大』は ハンドでは出来なかった繁雑な計算や製図をある程度の範囲ですが『自動化』出来る事です。
此の緩みの比率でも計算式を作成してCAD に組み込んで 置くと例えばグレーデイングでは体型の拡大と共に『緩み』の比率を自由に設定できる事です。と云う事はパタンの拡大操作に於いてヌード寸法の拡大と 共に『出来あがり寸法』によってもコントロール出来る事になります。これはアイテムによって『出来あがり寸法』が重要な場合にもパタンナーに とっては非常にコントロールが容易になる事になります。

その様な意味での緩みのコントロールですが其れには分量と比率の二つのコントロールが必要です。一番常識的なのはバストに対する(%)を同じに する考え方です。例えば基準寸法が B 80 cmに付き11.3 % であればB 100 cmでも同じ%とすると先の例で計算すると(B 80 cmに付き 9.0 cm) は (B 100 cmでは 11.3 cm) になる事になります。
勿論計算式には繁雑な計算でも組み込む事は可能ですが、それでは製図の完成後にハンドで調整 等の操作を加える際には別途の計算で繁雑になる怖れがあります。

それで二つの中間的な考え方からバストの拡大 3.0 cm 毎に後巾・カマ巾・前巾各部位に0.1 cm ずつ加える、 或は 4.0 cm 毎に後巾・カマ巾・前巾各部位に0.1 cm ずつ加えると云う方式です。此処ではバスト4.0 cm 毎に後巾・カマ巾・前巾各部位に0.1 cm ずつ加える方式の計算をして見ましょう。

緩みの計算式の作成

普通体型のバストのバランス配分の計算式にバストの拡大に伴う「緩み」の比率の逓増を付け加えれば良いのです。

(B - 80)/4 = はバスト80 〜のPt数です。各Ptに 0.1 cm の緩みを加えますから×1/10 ちなります。合わせると(B - 80)/4*1/10 ですから (B - 80)*1/40 = となります。
この緩みの計算式を体型バランスの計算式に付け加えて置くとグレーデイングの身体寸法入力に際して同時に≪緩み≫も自動的に計算され、 Ptに加えられて拡大されます。




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