『パタンの修正』では部分の変更操作を行いましたがこの項では部分の変更を全体としての考えて行う『基本操作』を纏めました。
パタンの扱い方に相違はありませんがバランスの相互に関連する部位の片方を変更する場合、例えば肩丈に影響しないように前丈を拡大したいような場合、の操作には
注意が必要です。
そのような場合の操作の考え方・方法を整理してまとめて置きます。『修正の操作 1・2』と読み合わせてご理解ください。
主な変更を行う部位
☆ 周径線の変更(バスト・ウエスト・ヒップライン)
☆ 前丈と後ろ丈:背丈、前身丈:カマ丈
☆ 後ろ肩丈と前丈
☆ 後ろ肩巾と前肩巾
☆ 後ろ首巾と前首巾
☆ 複数のヶ所の変更
パタン操作の3っつのポイント
〜変更量の計算・各部位間の関係、扱い方法
● 変更量の計算
パタンの一部の分量を変更する際には「何処で」「どれ位の分量」「どの方向に」変更するか?がポイントです。例えば
バストの場合では前巾・後ろ巾・カマ巾の変更すべき分量を予め計算しておく必要があります。
● バスト線の拡大〜他の横関係の部位との関係の調整
バスト線を横方向に拡大すると当然、ウエスト・ヒップ線も拡大します。更に前首巾・後ろ首巾、乳頭間隔,肩巾も拡大してしまいます。この
横の各部位の関係を考慮して操作を進める事がポイントです。操作は重心線を基点に前巾は前方向に、後ろ巾は
後ろ方向に移動し、カマ巾は前後に半量ずつ、重心線より脇方向に移動します。
● 実際のパタンの扱い〜切り開く方法とスライドさせる方法
実際の操作ではパタンを切り開いて分量を加減(縮小の場合は重ねる)方法とパタンを滑らせて分量を加減する方法とがあります。前者は手間が掛かりますが判りやすいのが特徴です。後者は慣れれば手間は少ないのですが混乱しやすいと思われます。しかし後者はデザイン・その他の操作にも応用できて慣れれば大変便利です。
以上の三つのポイントはパタン変更を行う場合には必ず、予め確認して操作に取り掛かります。怠ると思わぬ失敗をしたり、ミスをしてやり直す事になりかねません。特に複数のヶ所の変更の際は簡単なメモをとりつつ実施される事をお勧めします。
バスト・ウエスト・ヒップライン
〜例としてバスト 82 cm → 88 cm(+6 cm )拡大するケース
● 各部位の変更量の計算
- カマ巾のバランスは「Xcm × 1/10 + 1.0cm」 ですから変更量は「6 cm × 1/10 = 0.6 cm」です。
- 前巾のバランスは「Xcm × 2/10 + 1.0cm + (x cm × 1/20)」ですから変更量は「6 cm × 2/10 + 0.3 =1.5 cm」です。
- 後ろ巾のバランスは「Xcm × 2/10 ー 1.0cmー (x cm × 1/20) 」ですから変更量は「6 cm × 2/10 ー 0.3= 0.9 cm」です。
▲ 案連する部位の変更量の計算
- 前首巾のバランスは「Xcm×1/20 ×7/10 + 3.4 cm」ですから変更量は「6 cm × 1/20 × 7/10 = 0.21 cm」です。
- 後ろ首巾のバランスは「Xcm×1/20 +2.5 cm」ですから変更量は「6 cm × 1/20 = 0.3 cm」です。
- 乳頭間隔のバランスは「Xcm×1/10 +2.5 cm」ですから変更量は「6 cm × 1/10 = 0.6 cm」です。
- 後ろ肩巾のバランスは「身長×1/20 + X cm × 1/10 + 2.5 cm」ですから変更量は「6 cm × 1/10 = 0.6 cm」です。
バストを変更すると上記の部位のバランスは自動的に変化しますので注意してください。
カマ巾= 0.6 前巾= 1.5 後ろ巾= 0.9 cm 計 3.0 cm = (拡大量 6.0 cm × 1/2)
バランス計算式に拡大の変更量のみを当てはめて計算すると簡単に各部位の変更量が計算できます。
更に簡便にはカマ巾の変更量をバスト拡大量の半分から
差し引き、残りの2/3 を前巾、1/3 を後ろ巾に配分すれば近似値になります。
カマ巾の変更量 = 6.0 × 1/10 = 0.6 cm
前巾の変更量 = (3.0 - 0.6)× 2/3 = 1.6 cm
後ろ巾の変更量= (3.0 - 0.6)× 1/3 = 0.8 cm> 計 3.0 cm〜多少の誤差は無視できる範囲か否か?判断します。
前首巾の変更量=6,0×1/20 ×7/10 = 2.1 cm
後ろ首巾の変更量 = 6.0 ×1/20 = 0.3 cm
乳頭間隔の変更量=6.0 × 1/10 = 0.6 cm
☆ バスト線の拡大
前身ごろの操作
- バスト線の水平線に沿って前巾は重心線を基点に前方向へ1.5 cm水平にずらし、前の中心線を写します。
- 前首巾分量 0.2 cm, 逆にパタンを戻して前のネックポイントを記入し前衿ぐり線を延長して記入します。
- 更に 0.4 cm (=乳頭間隔分量 0.6 ー 前首巾変更量 0.2 cm)を戻してBpを記入し、肩線、ウエストのダーツの開き口、裾線のダーツの開き口までを描きます。
- 更に 0.9 cm (前巾変更量 1.5 cm ー 乳頭間隔分量 0.6)を戻して重心線を合わせ、脇側の肩線、肩点、袖繰り線を肩線のダーツの開き口からウエストのダーツ
点、裾線まで描きます。新しい Bp の前側では0.4 cm, 後ろ側では0.9 cm 開いています。
- 最後にカマ巾の変更量の 1/2 ( 0.3 cm) を前後の分けて脇側にスライドさせて脇線を記入します。
後ろ身頃の操作
- バスト線の水平線に沿って後ろ巾は後ろ方向に 0.9 cm 水平にずらし、後ろの中心線を写します。
- 後ろ首巾分量 0.3 cm 逆にパタンを戻して後のネックポイントを記入し後ろ衿ぐり線を延長して記入します。
- 更に 0.3 cm (=後ろ巾変更量 0.9 cm ー 後ろ首巾変更量 0.3 cm) × 1/2 を戻して肩甲骨点(肩ダーツの頂点で代用)を記入し肩線、裾線のダーツの開き口までを描き、ウエストのダーツの開き口をマークします。
- 更に 0.3 cm (=後ろ巾変更量 0.9 cm ー 後ろ首巾変更量 0.3 cm − 0.3)を戻して背巾線を合わせ、脇側の肩線、肩点、袖繰り線,裾線のダーツの開き口まで
を描き、ウエストのダーツの開き口をマークします。肩甲骨点(肩ダーツの頂点)では前後側で 0.6 cm 開いています。
- 最後にカマ巾の変更量の 1/2 ( 0.3 cm) を前後の分けて脇側にスライドさせて脇線を記入します。
- 以上で全体の拡大が完成しました。肩ダーツ線は各開き口から新Bp,肩甲骨の点と結び直します。この際に肩巾を計測して拡大分量 0;.3 cm を確認し、若し不
正確なら後ろ肩巾のダーツ線の位置を加減して調整します。
- 肩線はダーツが開いた為、角度が多少変化してます。肩線に変更のある場合は『後ろ肩巾』を確定し、前肩巾を後ろに合わせます。
- ウエスト線・ヒップ線もダーツ点はパタンを平行にずらした点で記入しますと変更はありませんからバストと同量拡大します。若しバストの変更分量とは異なる指示があ
ればウエストのダーツ、ヒップの重なり分量を調節して合わせます。
以上はスライド方式で説明しましたがポイントは
@ 前巾・後ろ巾の拡大を決めてから首巾や乳頭点・肩甲骨点までパタンを水平に戻しながら全体の変更量を関連する各部位に配分し、全体で前巾・後ろ巾の変更を完了する点にあります。
此れによって全体のバランスが崩れないで拡大する事になります。『パタンの修正』の項で述べました操作と『パタンの操作』とは部分的な変更と関連する部位全体の
バランスの変更との違いがあります。
ウエスト・ヒップ、ラインの調整
- 前巾・カマ巾・後ろ巾の変更を行うと、ウエスト線・ヒップ線もダーツ線が元パタンと平行ならば当然、同様に変更してしまいます。若し体型上で必要があれば調整を
おこないます。
- 体型が反身体型(反り身)なら前ウエストダーツを狭く、後ろダーツを拡げます。屈身体型なら反対の操作を行います。
- 体型が中年の肥満体型の場合は前後ともダーツを狭めてウエストの分量を拡大します。
- ヒップ線の場合も同様で腹部が出ている体型の場合は前のウエストからのダーツ線をヒップ線で交差させ、腹部の分量を増加させます。臀部の場合も同じく後ろへ
突き出ている場合(出尻)、平らな場合等、其れぞれの条件を考えて分量を調整します。
- ポイントはバスト線の分量が基準で体型のウエストの括れ具合・ヒップの張り出し具合を体型の相違に合わせて表現するのがウエスト・ヒップ、ラインの
調整なのです。
肩巾の調整
- 前後とも肩ダーツはダーツ線の移動に伴って元のパタンに平行に描いて来ましたので大体前後とも 0.6 cm 程度拡大してますが、確認する要があります。後ろ側の肩ダーツ線を閉じて後ろ中心の『ネックポイント→肩点』
を計測します。
- 若し元のパタンと比べて修正の必要がある差があれば肩ダーツの巾を狭めたり(肩線の拡大)広めたり(肩線の縮小)して調整し、小肩線を引き直します。
- 後ろの肩巾の調整が出来ましたら後ろ側と同分量を前肩ダーツでも調整します。最後に前後の小肩線を合わせて同寸法である事を確認して下さい。
- なお肩巾の調整については『パタンの操作(3)』を参照ください。
切り開き方式の場合
- 切り開く場合は@ 前首繰り・後ろ首繰り線の中間で裾線まで垂直線を記入し、切り離します。A 更に肩ダーツ線からBp・肩甲骨点を通ってウエストダーツ →
裾線まで切り離します。更に脇の袖繰り線からカマ巾の変更量の前後1/2 づつを脇に出して袖繰り線を記入します。
一般には外側の前中心線、脇線を出したりして拡大が行われていますが、拡大量が多いと首巾や前後のバランスが崩れ
て変なシルエットパタンになる例が多く見られます。これは全体のバランスを無視する結果で、綺麗なシルエットは得られません。
細かいバランス計算は面倒でも拡大変更量全体の 1/10 を袖ぐりに、変更量の半分からカマ巾分を除いて残り
の 1/3 を後ろ巾に、2/3を前巾に割り当てて欲しいと思います。
同時に首巾・肩巾・肩線・等の変動に注意して全体としてのバランスが崩れないように操作を進めます。
洋服は柔らかい生地を裁断して縫い合わせるものですから恰好はつきますが着心地は雲泥の差が出てシルエットも綺麗になります。
Ladie's Patan Cutting のホームページ
(ホームへ)