トルソー原型から他の原型への展開(1)
☆トルソー原型からウエスト&スカート原型への展開
トルソー原型は体型の大きさとバランスを表現する基本の原型です。
具体的にコスチュームの作成の際は更にアイテム原型と云う『中間的な原型』を作成して置き、それを媒介としてデザインを加え
てパタンを作成します。
基本原型 → アイテム原型 →+デザイン = 実際のコスチューム・パタン
☆ トルソー原型とウエスト原型の『ウエストの緩み分量の相違』について
トルソー原型 後ろW 2.5 cm 前W. 1.0 cm 計 3.5 cm W周径 7.0 cm
ウエスト原型 後ろW 1.5 cm 前W. 0.5 cm 計 2.0 cm W周径 4.0 cm
- トルソー原型では上下が繋がっているためにある程度以上の「緩み」がないとシルエットが綺麗に落ちず、ウエストに「つれ皺」が出てしまします。7.0 cm は最低限の『緩み』でしょう。
- 此れに反してウエスト原型では上下が分離しているため更に『緩み』を少なくしてピッタリしてシルエットを造ることができます。
- BPの真下のダーツは v の左右に配分し、BPと結びます。
- 脇のダーツは T の左右に配分し、それぞれSと結んで前脇線、後ろ脇線とします。
- C 真下のダーツは Ww の左右に配分し、C と結びます。
- M 真下のダーツは m の左右に配分し、n と結びます。
- 裾線は、前後の脇線を合わせ、ダーツをたたんだ状態にして繋がりよく引き直します。
- Cの真下のダーツは C1 を基点にしてたたみます。
- 後ろ中心は、n から後ろ中心線に直角線を出して交点をBc' とし、Bc 〜 Bc' と同寸法を Wc から下にとり、裾線と繋ぎます。
- 後ろ身後頃の『地ノ目線』はバスト線と直角の垂直線に通します。
後ろ中心線と平行ではありません。
- 前身頃では『地ノ目線』は前中心線と平行に通します。
ウエスト原型の完成と展開
ウエスト原型は更に使い勝手を考慮して変形して使用することが多いのです。一般的な変形を紹介します
- 後ろ身頃ではC直下のダーツを C1 を基点にしてたたみます。
- 前身頃では前肩のダーツを脇へ移動します。
- Bpを基点に、Bp 〜 Sf をコンパスにとって前肩ダーツ線の上に短い円弧を振り、ダーツ線との交点をs1,s2 とします。
- Sf から下にs1〜s2 の1/2 を取ってs3 としてBp と結んで『切り開き線』とします。
- Bp を基点にして前肩ダーツを閉じ、s3 の位置で開きます。
後ろ身頃のバスト線は脇で沸き側に下がり、前身頃ではバスト線の位置でダーツが開き、前後はバスと線では連結できない状態になります。これは使い勝手をよくするための変形ですから前後の関係はやはりバスト線を水平の状態に戻して考えねばなりません。
従来の原型の問題点と修正方法
これは私が若い頃洋裁学校で学んだ最初の原型です。先の展開したウエスト原型と似ていますが、使って見ると色々と問題があります。ここで『なぜか?』を分析してみましょう。
@ この原型ではウエストのダーツ・肩のダーツが一切ありません。
ウエスト原型はスカートと組み合わせて(縫い合わせて)用いる原型ですからウエストダーツが無
いとウエストで緩みなしに絞られた状態は判らず、従ってスカートをどの様に縫い合わせるかも判りません。
A 脇線を合わせるとバスト線は水平になり、一見前後は連結しているようですがウエスト線は前で大きく下に下がり屈折してます。つまりこのパタンは肩ダーツを
閉じて、その分量をすべてウエストに移動した状態と予想されます。
B するとこの原型では実はバスト線は水平に設定されてなく、前後のパタンは上下に『ずれて』いる事になります。更にウエストダーツの設定が無いので、上下の
バランスは無視されています。従ってスカートとの連結は行えません。
以上の点から前後の中心線は垂直ですが、横のバスト線は水平でなく、前と後ろの肩線と首周りを描いて袖ぐりを脇に開いた『かたち』
で前項で述べた『体型基準線』の考慮は無いように見受けられます。
このパタンについてヨーロッパの識者に伺いました処、
「これは家庭洋裁で用いる簡便裁断の方法だろう」との事でした。業界では主流は立体裁断が中心になっているようです。
このパタンに体型基準線を当てはめて修正すると、この原型の特徴が浮かび上がってきます。
☆ 準備の操作
- 前後の脇線を合わせて並べ、後ろ身頃のウエスト線を前方向に延長して前身頃の前中心線を垂直に保ったまま、ウエスト線を合わせて見ます。
その操作の為にはBPを通って垂直線を引き、前肩ダーツの線をウエスト線まで切り開きます。
- 前中心線でウエスト線を後ろウエストの水平線にに合わせて引き上げてみると、前肩ダーツは開き、BPから下はパタンが重なり、同時に脇線ではダーツ状に開いてきます。
- 前中心のバスト線のラインは上方向に引き上げられ、脇からのバスト線は斜め上方向の斜線になります。これは先に述べた「トルソ原型の切り離された上部分」に
似た形になりました。つまり前後の中心線を垂直に、バスト・ウエストの周径線を水平にした状態になりました。
- すると若しこの原型をそのまま組み立てますとバスト線は「点線」の位置になり、元の原型のバスト線は脇下から斜め上方向に逸れてBPの位置は上にずれてくる事
になります。
☆実際に組み立てた場合の影響は?
寸法の上では差し支えないようですが『地ノ目線』に注目してみると次の様な問題があります。
- 『地ノ目線』に注目して見ましょう。前中心では真下に落ちる『地ノ目線』は身頃の脇側では斜めになります。ですから若し脇が縫い合わされなかったバスト線の下の
斜線の部分はBPの下で前方向に押し出されて、丁度「フレアー」のように飛び出す結果になります。
- 脇線を縫い合わせると、その部分を脇で開いた「ダーツ状の空き」が脇方向へ引っ張り、前身頃の脇部分の『地ノ目線』を引き戻すかたちになります。
- 本来バスト線が水平でウエストダーツをとらないウエスト原型を組み立てた場合は縦の『地ノ目線』は水平のバスト線から垂直に落ちます。、バスト線が水平でないと
『地ノ目線』はストレートに落ちないでシルエットもストレートになりません。
- しかしこのケースでは前身の脇部分では斜めの『地ノ目線』になり、シルエットは安定しません。更にこの原型では
前丈:後ろ丈のバランス、前巾:カマ巾:後ろ巾等の『体型バランス』をチェックする事が出来ません。
☆ 修正について
- 前述したように@ 体型基準線が垂直・水平に通っているか?を点検して、この例では前身頃の前部分を引き上げてバスト線を水平にしました。
- A バスト線が水平ならば下に落ちる『地ノ目線』は垂直になるので、現在のパタンにあるウエストの下の重なりや空きは全部、無視します。
- B バスト線を引き上げたために出て来る肩ダーツは重要で、これがバストの膨らみ分量になります。
- C 若し元の原型のような展開原型が必要なら修正した原型から展開して作成します。
- 袖繰り線の下端から脇線を記入して前後を切り離し、前身後ろの肩ダーツを脇、またはウエスト線に移動して作成すればよいのです。
- その他の体型のバランスの修正は、原型によって寸法が異なるので各自で行ってください。この例の場合では前巾・後ろ巾の緩み分量に対してカマ巾が狭いように
思えます。
スカート原型の製図
スカート原型の製図は別個に行います。体型基準線は水平に引かれたヒップ線で、枠組を描いた後にウエスト線にダーツを記入し、完成させます。
☆ スカートの枠組の作成
- 寸法は
ウエスト=64.0 cm(+ 3.0)
ヒップ =90.0 cm(+ 4.0)
ヒップ丈 = 19.8 cm (身長× 1/8)
腹丈 = 19.8 cm
脇丈 = 20.5 cm(ヒップ丈+ 0.7)
スカート丈 = 64.0 cm
- 水平線を引いてヒップ寸法(含む緩み)1×1/2 をとり、G 〜 Gf とし、G 〜 Gf の中央より 0.5 cm を後ろ側を Gs とします。
- G, Gs, Gf から上下に垂直線を出し、垂直線上にヒップ丈(G 〜T)・
脇丈(Ts 〜Gs)・
腹丈(Tf 〜Gf)・
スカート丈(T〜L、Tf 〜 Lf)
を取って、T、L から水平線を引いてウエストと裾のガイド線とします。
- T から前方向へ(ウエスト + 緩み)× 1/2 をとり、T 〜 tv とすると tv 〜 Tf はウエストの脇あき、とダーツ分量の合計になります.。これを次のように配分します。
@ ( tv 〜 Tf ) × 1/3 = 後ろのダーツ分量( 4.5 cm)
A ( tv 〜 Tf ) × 1/3 + 0.5 cm= 脇のダーツ分量( 5.0 cm)
B ( tv 〜 Tf ) × 1/3 ^ o.5 cm= 前のダーツ分量( 4.0 cm)
☆ ウエストダーツの配分〜位置・方向・長さ
- 後ろのダーツの配分は中心側を 2.1 cm.脇側を 2.4 cm, とします。
- 脇のダーツ分量は、Ts から短い水平線を出し、後ろへ 2.7 cm, 前へ 2.3 cm と配分し、T1,T2 とします。
- 前のダーツ分量は、2等分して づつとします。
- ダーツの位置・方向・長さは腹部・腰骨・臀部のっ膨らみに合わせて決めます。
目安としてT~Ts の長さから後ろダーツと後ろ脇ダーツを除いた部分を3等分し、Tから1/3,2/3 の位置に置きます。
(下図のウエスト線、上の図を参照)
前側も同様にTf ~Ts の長さから前ダーツと前脇ダーツを除いた部分を3等分し、Tf から1/3,2/3 の位置に置きます。
(下図のウエスト線、上の図を参照)
但し中心側のダーツの位置はウエスト原型のダーツの位置に合わせてあります。
- ダーツの方向・長さは後ろ中央側のダーツはヒップ線までの2/3とし、垂直に降ろした点より 0.8 cm 脇側にダーツの頂点を決めてダーツの開き口と結びます。
- 後ろ脇側のダーツはヒップ線までの2/3よりやや短くし、垂直に降ろした点より 0.4 cm 脇側にダーツの頂点を決めてダーツの開き口と結びます。
- 前の中央側のダーツはヒップ線までの1/2とし、垂直に降ろした点より 0.8 cm 脇側にダーツの頂点を決めてダーツの開き口と結びます。
- 前の脇側のダーツはヒップ線までの1/2とし、垂直に降ろした点より 0.5 cm 脇側にダーツの頂点を決めてダーツの開き口と結びます。
- ダーツの方向・深さは腹部・腰部・臀部の膨らみで決めますが、ダーツの頂点の配列は図のように前から後へ向けて綺麗な曲線を描くようにします。
- 脇線の記入はLs から 2.0 cm を前後にとり、L1,L2 とし、ヒップ線のGs より3.0 cm の点を目安にT1 〜 G3〜 L1 及び T2 〜 G3〜 L2 と結びます。G3 の目安点までは滑らかな曲線で描き、L1 へは直線で結びます。
- L1,L2 では直角に裾線を交差するように出して前・後ろの裾線を記入します。
Ladie's Patan Cutting のホームページ
(ホームへ)