『美しさの基準』
 プロポーション と バランス とは?

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このような不具合の原因を理解すには「体型のバランス」「パタンのバランス」
合わせ方を理解する必要が あります。その前提に『バランス』と『プロポーション』について見ましょう。
これは衣服の発達した西欧の『体型の美意識』の根底にある基本的な発想です。


プロポーション と バランス の概念

○ 一般に『8頭身』と云う表現は理想的なプロポーション、と云われてますが、元来、西欧で発展した体形の美しさの感覚では人体の『全体と各部分との 釣り合い』をその基本と考える発想があり、これを『プロポーション』と云いました。

○ これに対して体型のある部分と他の部分との釣り合いが『バランス』と云う概念でバランスの総合したものが プロポーションと云えるでしょう。

○ 多くの学者が研究した「理想的なプロポーション」の図形を『カノン』(プロポーションの模型図)と云い、多くの研究があります。カノンはエジプトの時代からある事が証明されてますが、 近代ではフリッツのカノンやグレーブスのカノンがよく知られています。

○ 日本の場合同様にカノンを図示すると次の例のようになります。昭和年代では6.5〜7.0頭身でしたが1990年代に入って格段の改善が 見られ、顔が相対的に小さくなり、7.5頭身と変化しつつあるように見うけられます。

バランスの細分化

* プロポーションは身体のある部分を基準にして全体との対比を見る発想で、例えば頭高を基準に身長はその何倍か?と云う見方からX頭身と云う表現が出てきます。



衣服の発想の相違がある。

○ このような考え方から、衣服の作製は
衣服は着る人のサイズで着られる範囲で行うと云う面と
『体型の美しいバランス』に出来るだけ近ずたいと云う面と
二つの条件を満たし,それによって成るべく美しく見える衣服を作製する、という発想が見られます。
戦後の衣服製造で「立体裁断」の技術が西欧より紹介され、一般化しましたがこれも理想的な体型に近ずけて衣服を作製する、と云う方法です。

○ わが国での伝統的な和服ではこのような発想はなく、洋服でも体の『かたち』に合わせる、と云う意識が根底にあり、従って衣服制作の過程での バランスの意識は欠如してたように思われます。

○ これは洋裁の教育にも表われて「何故X cmのダーツをとるか?」と云う理由は教えられずに「やり方としてXcmのダーツを取る」と云う教え方がされて来ました。

○ これは『良い、悪い』の問題ではなく、文化の相違と云えるでしょう。このホームページでは今まで紹介される事の少なかった体型バランス から如何に衣服を作製するか?と云う考え方を紹介する予定です。

衣服の発想からパタンの発想の相違へ

* 日本の洋裁教育のパタンの基本的な目的には『いかに個別の体型に合わせたパタンを作製するか?に主眼を置いてきました。それで『仮縫い・補正』と云う最終的な体型に   適合させる過程を設定して居ります。

* ヨーロッパのパタン作製の根底には『いかに美しいシルエットを造り、その中に個別の体型を入れ、若しその体型に欠点があればそれを補って美しく 見せるか?』と云う発想があり、その発想は伝統的な『プロポーションの美しさの追求』と云う伝統的な思想の結果として生まれてきたもの、 と云う事が出来ましょう。

* この発想は主としてラテン系の国ではダミーの作製の過程に見られ、イタリヤの小さな工房では夫々独自のプロポーションを強調した個性的な ダミーを作っているように思われます。例えばバストが不自然なほど張り出し、背はウエストで前方向へくびれているダミーなぞもあります.

* この発想をゲルマン系の人は『理想的なプロポーションの論理的な仕組みはなんであろうか?』と考えて到達した方法がMullerのパタンの考え方で あると云えましょう。それは不特定多数の体型の類似性に着眼し、それを細かくバランスとして   計測し、そのデータを分析して固体間の類似性と差異性を法則化して色々なサイズの体型に対して   標準のバランスを見出して計算式に纏め、そのバランスを組み立てて『原型を描く方法』   である、と云えます。

このような理想的なバランスの体型の人は実際には存在しません、がそのサイズの人なら誰でも着られ、彼女自身は自分の体型に適合している様に 感じられ、且つ美しいバランスのシルエットが表現できる、と云う事になります。
イタリヤの洋服は『何となく洒落て見える』と思われる方は多いと思われますがその背景にはその様な歴史的な『服装感の相違』があるのでは ないでしょうか?

* また洋裁教育ではウエスト線までのウエスト原型を作成し、出発点としますがミュウーラーはバスト線とウエスト線、ヒップ線までのシルエットに 主眼を置き、女性のバスト〜ウエスト〜ヒップの美しいトルソー・ラインを原型として考え、その為にバストに対するウエスト線、ヒップ線への地ノ目線 の流れを重要視し、ウエスト〜ヒップ線の配分はバスト線とのバランスで配置してトルソーラインのシルエットを創り出します。日本の場合とミューラー とは原型の作成の概念が相違します。

* 両者の相違はその美的な意識の相違に基ずいた結果で優劣の問題ではなく、文化・伝統の相違と考えるべきでしょう。読者はそのような文化的な背景 を納得されてミューラーの理論と操作をご理解頂きたいと思います。両者の相違はその美的な意識の相違に基ずいた結果で優劣の問題ではなく、 文化・伝統の相違と考えるべきでしょう。読者はそのような文化的な背景を納得されてミューラーの理論と操作をご理解頂きたいと思います。


以上のような衣服感覚の経緯を前提に『どの様にして体型のバランスを立体的なパタンに置き換えるか?』をご覧ください。


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