体型の『紙張り〜平面展開図』は『バランス計測値』と共に体型の構成や性質を知る為には最も重要なデータです。先にも述べたように我々の体型は
人毎に皆相違しますが全体として見ると類似点と相違点があり、『紙張り〜平面展開図』と『バランス計測値』からその性質を認識して原型を合理的に
描画する方法を案出します。
この展開図の分析とバランス計測とは体型の性質の両面で必ず数値の裏付けが大切です。原型は体型の性質に従って
数値を当て嵌めて描画するからです。
@ 展開図はバスト線が水平に、それを前後の中心線と中央の重心線とが全体を区切っています。バスト線は後巾・カマ巾・前巾の三つの部分に仕切られ、
その巾の対比はバストの大きさによって異なります。
子供の時には前巾=後巾でカマ巾は全バストの×1/10+1.0 cm 位の比率ですがこの対比は
バストが大きくなると変化してきます。この変化はカマ巾は全体との比率は変わりませんが、前巾は後巾よりも大きくなる比率が大きいのです。
これは女性の身体の成長変化によって乳房が張り出し前巾は後巾より大きく変化するからです。数値的にはバランス計測値の分析で認識できます。
A バストの大きい人と小さい人の比率を較べてみますとその対比の比率は異なり、バストの拡大に連れて前巾は後巾より広くなります。その数値的な
変化はバランス計測値の分析で認識できます。
これは乳房の張り出しの分量が多くなるからで比率の拡大はバランス数値の統計ではバストの拡大に連れて逓増します。
B カマ巾はバストの大きい、小さいに関わらず、バスト全体に対する比率はほぼ一定でバスト×1/10+1.0 cm くらいです。
C なおバスト線から脇のネック点までの後丈:前丈を見ますと元々前丈の方が後丈より長いのですが乳房が大きくなると共に前丈は後丈より
長くなります。つまりバストが大きくなると云う変化は
☆後巾より前巾はより大きい比率で大きくなり、
☆前丈は後丈より長くなる、
と云う
変化を連動して示す事になります。これを『体型バランス変化の連動性』と云います。
@ バスト線を水平に、また縦の基準線を垂直に展開した状態では肩線は前後に分かれて表示されますが元の立体では肩線は前後が合わされ、首脇の
N/Pや肩先点は共通した一つの点です。ですから平面図上、後身の肩先点の位置は後中心線からの距離とバスト線からの距離と二つの基準線からの
長さの合致する点にある筈です。
A しかし平面の展開図では後中心線と肩点とは一致せず、間に後肩ダーツが開いています。後肩の丸みは立体ですから平面展開図では
ダーツが開かれた状態に描かれます。これは3次元の丸みの高さが2次元の平面上に描かれた場合に立体状の高さが消えて、その代わりにダーツの
開きになって表現されるからです。
B これは前身の肩線とB/Pを通るバスト線の場合でも見られる現象で肩線+前首巾の長さと乳房を通る前巾の長さはのズレは平面に展開された場合、
肩線からB/Pに向けてのダーツの開きになって表われます。
首脇のN/Pは前中心線からは前首巾の距離にありますが(H点)重心線から見ますと後首巾と等しい距離にあります(Hs点)。この両者のズレが
肩線に対するバストの前巾のズレとなって開いて来ます。
図のように肩線からバスト線への切り開き(バストダーツの分量)を前中心線側に移して切り開き分を閉じ、前後の肩線を合わせて見ますと
脇のN/Pは重心線からの距離は後首巾とほぼ一致します。ですから重心線から後首巾の長さを取り、前中心線から前首巾の長さを取れば二つの点は立体上では合致して乳房の
高さになる筈です。
この後肩ダーツの膨らみと前巾の乳房の隆起とは肩線の長さとどの様ズレ、それが平面図上ではどの様に開いて くるのか?立体の関係を平面上に(2次元上に)描く事が原型描画での最も面白いポイントです。
@ 首脇のN/Pを接したまま、身頃を前後に開き、中心線を一直線に並べて見ると肩先点は前後に開いて来ます。前身の肩点は後身よりやや深く、前が
4.5 cm に対して後身は3.5 cm位の開きになります。この角度は通常は合計8.0 cm 位で肩の撫ぜ肩の場合はやや深く、怒り肩の場合はやや浅くなります。
A この角度は肩線の傾斜を決める際には重要なガイドになります。
@ バスト線に対してウエスト線は短く、その差はB/LからW/Lへのダーツとなって切り開かれて居ます。分量の総計はバスト線に対してW/Lの差に相当
しますがその開く部位は人の体型からある程度のバランスの共通性があります。
@左側の展開図では背巾線の切り込みはヒップ線まで通して空いています。右側の写真を見ると背巾線の上端、腕の後ろ側の付け根のポイント
から錘を付けた糸で垂直線を垂らしてみるとヒップでは僅かに体から離れ、浮いて来ます。これが展開図の背巾線がヒップ線に位置で開いてしまう
原因です。
A 大きく分けて重心線から前部分と後の部分とに分けてバランスを考慮します。ウエスト寸法の1/2が前中心線から後中心線までの差ですがその配分は
通常では重心線より前側は1/4W×1/2-1.5 cm 後側は1/4W×1/2+1.5 cm と前後のバランスで前後の差は 3.0 cm 程度です。
この差のバランスはB/L,W/Lの様々な体型差の組み合せでも略、同様な傾向が見られます。
B 前ウエストはバストの前巾と対比してその差がB/P下のW線へのダーツ量となります。残りの差が重心線〜後中心線の間のダーツ量となります。
C 後のダーツ量の配分は脇明きでは1.5 cm位で、残り分量の2/3は背巾線の位置、1/3は肩甲骨の直下の位置に開きます。
D ウエスト線で開いたダーツ分量はヒップ線へ向けて逆に閉じられて行きます。その閉じられ方はヒップの張り出し方によりますが、元々の基本分量
はバスト寸法でからそれ以上に張り出した分量はダーツ線は逆に重ねられて描画される様になります。これの程度はバスト線によって仕切られた
部位の間でバスト:ウエスト:ヒップの『張り出し』と『クビレ』によって決まります。
E バストからウエスト、ヒップ線へのダーツによって女性の美しい曲線美(シルエット)が決まって参ります。結論的にはドレーピングによって眼で
造形的な確認をする事が大事ですが、ダーツの配分によって併記的なシルエットを描画できるようにします。
体型の構成について***(5)背面の中心線の傾き
*** 背中心線の『クビレ』の設定ついて
A左図は背巾線の空間を埋めたパタンを左右合わせて見た処で、ご覧のようにダーツが広く開います。これを縫い合わせますと始めて背面
のシルエットが綺麗に落ちるのです。
すると後ろ中心線はバスト線とは直角に交差していないで、僅かながら中央に向けて傾斜してるパタンになり、これが背面のシルエットに
忠実なパタンです。この処理は原型作製の重要なポイントです。
B この背面の『クビレ』は女性のシルエットの美しさの重要なポイントで背面は背巾線より内側に多少なりともクビレ込んでいます。それを美しく
表現する為に原型では背中心線はバスト線とは直角に交差せず、先の背巾線での空き分だけ脇側へヒップ線の位置で減量し、丁度背中心線で左右の
背面の中央にダーツを取ったように原型を描画します。これが『背中心線の変更の理論』と云って原型描画では重要な操作になります。
よくストレート・ラインのシルエットの場合、変に後ろ側にフレアーが出てシルエットをくずしているのを見ますが、この点の配慮がないためと
思われます。
☆平面上に基準線を描いて計測値を置く
紙張り、平面展開及び展開図の分析・推論の詳細は
小野喜代司著、
「パタンメーキングの基礎」
「婦人既製服パタンの理論と操作」文化出版局版
をご覧ください。